研究課題/領域番号 |
20K12931
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
常田 槙子 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (20801781)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | フランス / 文化交流 / モトヨシ・サイゾウ / 石川剛 / アンドレ・ボジャール / 五姓田義松 / 翻訳 / 明治期 / 日本文学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、明治期にフランスで日本文学を翻訳するなどして日本の紹介に務めた人物の足跡を辿ることで、当時の文化交流の実相を明らかにしようとするものである。特に、これまでほとんどそのフランスでの活動が知られてこなかった、モトヨシ・サイゾウ、石川剛、アンドレ・ボジャール、五姓田義松の4人に注目する。まったく研究がなされてこなかった人物については、伝記的研究も合わせて行う予定である。また、それぞれの翻訳について、文化的な相違や時代背景などを考慮しつつ、原文と比較・検討することで、最初期の翻訳の工夫や特徴を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、明治期の日本において海外に留学した人物ならびに現地で日本文学の翻訳に務めたフランス人の足跡を辿ることにより、より多彩で重層的であった日仏交流の実相を明らかにすることを目的としている。2023年度は計画に従い、パリで日本文学・文化を発信していたモトヨシ・サイゾウ(1869-1895)について調査を進めてきた。現在はモトヨシのパリでの活動及びその著述を整理している段階であり、具体的な研究成果として発表できる状態にはなっていないが、これまで不明であったモトヨシの足跡が明らかになってきつつある。モトヨシは27歳という若さで志半ばで亡くなるが、短い期間に集中して日本の文学、演劇、宗教をフランスに紹介し、時には詩人として作品を発表したほか、俳優として自ら舞台に立つこともあった。その著述からは、ピエール・ロティのMadame Chrysantheme (邦題は『お菊さん』、初版1887年)によって作られた日本のイメージを払拭しようと努めていたこともうかがい知れる。また、Poemes de la Libellule(邦題は『蜻蛉集』、西園寺公望の下訳をもとに、フランス詩として和歌を翻訳したもの)を上梓したジュディット・ゴーチエとの親交や、東洋語学校の教師であったレオン・ド・ロニーに対する批判など、フランス人が日本を紹介していく当時の動きにもモトヨシが関わっていたことがわかっている。さらに、政治的な発言も認められ、日本だけではなく中国や韓国との関係を取り上げている。このようなモトヨシの活動はこれまでまったく知られてこなかったが、明治期の日仏交流の実態を明らかにするために重要であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度はコロナ禍において担当する授業が全てオンラインになったため、授業準備に予想以上に時間がかかり、研究時間を十分に確保できなかった。また、第一子の出産・育児に伴い研究活動を一時中断しており、かつ2023年4月から研究を再開したものの直後に第二子を妊娠したこともあり、研究時間が思っていたほど取れない状況であったため、全体として研究は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、モトヨシ・サイゾウ、石川剛、アンドレ・ボジャール、五姓田義松の4名を中心に、その活動を調査し、明治期における日本とフランスの文化交流の実相を明らかにしようとするものである。当初はそれぞれの人物の調査および考察に1 年ずつ時間を割り当てていたが(ただし、ボジャールと五姓田は2人で1年としていた)、研究が遅れ気味であることも考慮し、今後は以下のように時間を調整することとする。 令和8年6月までに、モトヨシ・サイゾウについて、渡仏した時期などまだ明らかになっていない部分を明確にできるよう調査をし、その足跡に関する成果を論文にまとめる。令和8年7月から11月にかけては、石川剛についての研究に着手し、研究成果をまとめる。令和8年12月から年度末までは、アンドレ・ボジャールについて取り上げる。令和9年4月から同年9月までは五姓田義松について取り組むこととする。また、上記4名のほかにも必要に応じて関係する人物にも目配りするつもりである。 それぞれの人物の足跡については、それぞれに割り当てた研究期間の間に調査結果を論文にとりまとめ、成果を発表する予定であるが、一方で本研究ではそれぞれが翻訳したテクストを用い、翻訳作品の「読み」も併せて検討することとしている。そのため令和9年の秋には、本研究の成果発表の場として、翻訳に関わるシンポジウムないしワークショップを開催する予定である。
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