研究課題/領域番号 |
20K12935
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
古矢 篤史 摂南大学, 国際学部, 准教授 (90747966)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 日本近代文学 / メディア史 / 横光利一 / 婦人雑誌 / 戦時下の文学 / 昭和文学 / 主婦之友 / 婦人倶楽部 / 戦時下の言説 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題は、日中開戦から終戦までの婦人雑誌メディアとそこに「連載」された文学作品を相互的に検証し、メディアと文学が戦時下において展開した役割や女性表象を明らかにする。特に一般家庭の婦人層に好評を得ていた『主婦之友』と『婦人倶楽部』の二誌を中心に「連載小説」の編集上の傾向や作品内のテーマ・表象を精査し、これらが国民国家(特に文部省・厚生省・陸軍省等)のイデオロギーや同時代の思想的枠組とけっして無縁でなかった実態を解明し、戦時下の婦人雑誌メディア掲載された「連載小説」欄が、時局の要請や雑誌の編集方針等に深く関わりながら、どのような「言説」として機能したかを明らかにするものである。
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研究実績の概要 |
2023年度は、前年度に引き続き、戦時下の婦人雑誌における言説群の検証と、その婦人雑誌で同時期に連載されていた長篇小説との相関関係の分析を行った。前年度後半からアジア・太平洋戦争開戦前後の婦人雑誌と連載小説の検証に着手しており、特に横光利一の一九四一年に連載された長篇小説「鶏園」と、その掲載雑誌『婦人公論』を中心に展開されている戦時下のジェンダー形成について分析を進めた。大政翼賛会発足後の翼賛体制下において、女性が家庭の中心となり家庭を保護する母性的役割を要請されながら、一方で銃後の労務を担って働くことを求められる職業婦人的役割も与えられるという、一見すると相反するジェンダー規範が成立していることが判明する。この相反するジェンダーが、国防婦人会などの集団性において言説として補強され、その機関誌や主要婦人雑誌の記事のなかで流通した経緯を辿り、このことが横光の「鶏園」の内容とどのように関わるのかを考察している。現在これらの論考をまとめているが年度内に書き終えられておらず、2024年度中に査読誌に投稿予定である。なお、本研究のなかで戦時下の言説をより精緻に調べるために婦人雑誌に限定せずに広範に調査した結果、横光利一の全集未収録資料を発見することができた。これらについては、論文「『定本横光利一全集』未収録対談――対談「横光利一氏に訊く 一問一答」、談話三篇―― 」(『横光利一研究』2024年3月))や、研究発表「未収録テクストの迷宮 」(横光利一文学会第23回大会)で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
残る課題である横光利一の「鶏園」の研究については、必要な調査はおおよそ終了しているが、論文の推敲と執筆進行途中での追加調査に時間を要している。特に追加調査では日本近代文学館(東京都)や国立国会図書館(東京都)での調査が必要となったにもかかわらず、教育活動や校務により十分な出張の機会が時間的に確保できなかったことで進捗が遅れてしまったことによるものである。このため「やや遅れている」とした。追加調査は2024年度前半に済ませ、秋季までには論文に成果をまとめられる見込みである。本論文により本研究課題の成果がまとめられる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
残る研究課題は横光利一の「鶏園」の研究の成果をまとめることである。追加調査は、戦時下の婦人雑誌の記事をより広範に調査し、言説の実態をより精緻に確認することである。2024年度前半に日本近代文学館(東京都)や国立国会図書館(東京都)への追加調査を済ませ、夏季から秋季までの時期に論文に成果をまとめられる見込みである。以上をもって本研究課題は完了する予定である。
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