研究課題/領域番号 |
20K12937
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 京都女子大学 (2023) ノートルダム清心女子大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
野澤 真樹 京都女子大学, 文学部, 准教授 (90802900)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 近世文学 / 滑稽本 / 読本 / モデル小説 / 大阪騒壇 / 出版 / 絶版処分 / 狂歌師 / 日本近世文学 / 大阪 |
研究開始時の研究の概要 |
大阪の実在人物「河内屋太郎兵衛(通称、河太郎)」をモデルとし、寛政年間に刊行された「河太郎物」と呼ばれる作品のうち『川童一代噺』『戯動大丈夫』『通者茶話太郎』の3作品の書誌調査を通して、「河太郎物」の出版と絶版処分、再刊に至るまでの享受の様相を明らかにする。また、これを土台として同種の作品に調査対象を拡げ、18世紀大阪に出来した作品が後年にいかに享受されたかについて明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
2023年度は、前年度までに行った寛政期「河太郎物」の成立(刊行計画およびそれに関わった狂歌師集団)に関する研究を土台とし、「河太郎物」本文の内容を精査し、年代の変化に従って河内屋太郎兵衛の描き方に変化が生じていること、また、作品に対する評価に対しその時代における河内屋太郎兵衛へのイメージが干渉していることを明らかにした。 「河内屋太郎兵衛の虚像-逸話の変容と寛政期「河太郎物」の生成に関して」(『読本研究新集』第15集、2024年2月)においては、近現代における河内屋太郎兵衛のイメージが分別のある理想的人物という側面に偏っており、そのイメージが寛政期「河太郎物」の第一作である『川童一代噺』への評価に影響を及ぼしていることを指摘するとともに、河内屋太郎兵衛像がこのように揺らいだ理由として、「河太郎物」の成立自体が年長者への伝聞という不安定な素材にもとづくことを指摘した。 「寛政期「河太郎物」における河内屋太郎兵衛像の変容過程 」(『国語国文』93巻3号、2024年3月)においては、寛政期「河太郎物」に該当する『川童一代噺』『戯動大丈夫』『通者茶話太郎』『絵本胆太郎夢物語』の四作品全てを考察対象とし、全話の性格を分類するとともに、年代が下るに従って収録される逸話の傾向に変化が見られることを指摘した。すなわち、後出の『通者茶話太郎』、『絵本胆太郎夢物語』においては、従来の悪戯者としての河太郎像よりも、「貧しい者を哀れみ、奢る者を懲らしめる」という性格や、分別者として世間を批判する河太郎の姿が強調されていた。 以上の研究を通じて、寛政期「河太郎物」を例にモデル小説の変容の一例を示すことができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度より新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で研究計画の大幅な変更を余儀なくされたものの、限られた研究方法を模索するなかで寛政期「河太郎物」そのものの内容や本屋仲間記録などをもとに、作品の成立や内容の変化を考察することで一定の成果を得たと考えている。また、2022年度以降には、当初目的としていた諸本調査も少しずつ進んでおり、全点の確認には至っていないものの、2023年度において寛政期「河太郎物」各作品の出版および絶版、再版などのおおよその時期や様相を描ける状態には到達している。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は課題期間延長、最終年度にあたるため、申請当初に目標としていた寛政期「河太郎物」の書誌調査の完了を目指すとともに、調査結果に基づき出版状況を整理し、発表したいと考えている。現在、およそ7割程度の書誌調査が完了しており、公開されている資料画像を活用すれば、おおよそ諸本の出版の前後を描ける状況にある。現時点での見解をより確かなものとするために、2024年度には可能なかぎり資料の原本を閲覧するとともに、これまでの調査結果の見直しをおこなう予定である。また、これまでの調査によって出版の状況だけでなく、板面の状態から当時の絶版や再版のありかたが窺えることも判明した。このことについては追加の調査によって、これまでに得た仮説の裏付けを行い、考察結果をまとめたいと考えている。
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