研究課題/領域番号 |
20K12943
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 千葉大学 (2021-2023) 高知工業高等専門学校 (2020) |
研究代表者 |
佐藤 元紀 千葉大学, 教育学部, 准教授 (40756516)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 日本詩壇 / 高知新聞 / 岡本彌太 / 地方詩人 / 十五年戦争 / 戦争詩 / 15年戦争 / 近・現代文学 / 戦前・戦中詩 |
研究開始時の研究の概要 |
詩壇の公器として昭和8年4月に創刊された「日本詩壇」は、地方詩人達の作品を多く掲載している点を特徴とする詩誌である。それ故に、同時代の「四季」や「歴程」のような評価を受けることなく、掲載された地方詩人達の作品も埋没してしまっている。「日本詩壇」の資料的価値の一つとして、高知県出身詩人の岡本彌太の詩業が挙げられる。近代批判の視点と地方性とが交差するその詩篇や詩論は、戦後の詩誌「山河」創刊の原動力となった。岡本彌太を視座として、言論統制下での「日本詩壇」における地方詩人達の文学的営為を辿り、十五年戦争期における地方詩(人)の展開と〈地方から見た中央/近代〉の在り方を考察する。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、令和4年度までに収集した岡本彌太の「高知新聞」に連載掲載された「随筆 楚歌春秋」の翻刻作業と注釈の作成、分析を進めた。同資料は詩人の猪野睦氏旧蔵の複写物を岡本彌太遺族、猪野氏遺族の同意の上で翻刻を行ったものである。 同資料の存在についてはかねてより言及があったものの、高知新聞社、オーテピア高知図書館、高知県立文学館、国立国会図書館等にて調査を実施したが、いずれにも収蔵されておらず、現在では確認が困難な資料であることが判明した。そのため、翻刻を行い、広く公開することが妥当であると判断した。 内容としては、同時代の文学、文化、流行、社会等の状況を捉えて批評した随筆であり、これまで扱われる機会が少なかった岡本彌太の第一詩集『瀧』(昭和7年10月、詩原始社)以降に本格化してゆく彌太の創作を捉える上での基礎資料になると考えられる。 また、芥川龍之介の詩篇に関する批評、同郷の寺田寅彦の随筆に関する批評、同時代の詩人の小畠貞一との関わりから見える詩人間ネットワークの構築など、文学に限っても昭和10年代の15年戦争下の状況を垣間見ることができる点で興味深い資料である。 この研究成果により、高知という一地方に身を置いていたからこそ、却って近代という時代をより客観的に、より批判的に捉えることができた岡本彌太の眼差しを同資料には看取することができ、全国誌であった「日本詩壇」における15年戦争期の岡本彌太の詩篇との関わりについても見通しを持つことができた。 成果は、「地方から見た近代の一側面-岡本彌太「随筆 楚歌春秋」翻刻(抄出)」(「千葉大学教育学部研究紀要 第72巻」令和6年3月)として論文化した。「随筆 楚歌春秋」に見られる岡本彌太の自作に関する言及を分析するなかで、「日本詩壇」に掲載された彌太の詩篇を再検討する必要性が生じた。令和6年度はその点について研究を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は「研究実施計画」に記載した「抒情詩人として時代に対峙した岡本彌太の十五年戦争期の「日本詩壇」を中心とした詩業について考察し、その同時代性や批評性について問う」という目標に対して、再発見資料の翻刻と注釈、分析をもとに一定の成果を得ることができた。コロナ禍に伴う研究当初の予定からの遅延はおおむね解消され、順調に研究を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度はこれまで調査を行ってきた資料の不足を補いつつ、「日本詩壇」掲載の岡本彌太の詩篇と、令和5年度に研究を行った「高知新聞」掲載の「随筆 楚歌春秋」との関わりについて分析を行い、研究の最終年度として論文等でその成果を公開することを目指す。
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