研究課題
若手研究
本研究は、愛知県奥三河地域の近世期の民俗信仰について、説話伝承の観点より考察を加えるものである。中心となる研究対象は、奥三河地域の在地宗教者(太夫)が行った宗教儀礼である。奥三河地域の太夫の家には、祭文をはじめとする近世期の儀礼詞章が数多く遺されている。本研究では、そうした儀礼詞章の中で祭神の来歴を説く説話の内容について分析する。その際には、各説話の文学上の系譜と地域独自の伝承的展開の両面に特に注目する。これらの研究を通して、奥三河地域における民俗信仰の思想体系を解明する。また他地域との比較研究を行い、奥三河地域の事例をより普遍的な日本文化研究へと展開させる。
本年度は、愛知県奥三河地域の宗教儀礼に関わる文献について、新たに18点の近世期の写本の書誌調査を行うと共に、これまで収集した調査記録の整理や分析を行った。新たに調査を行った写本は、本研究にて継続的に研究を進めてきた、陰陽道に由来する呪術書やその書承に携わった修験者と関わる資料であった。この調査成果をもとに、近世期の奥三河地域における宗教知識の受容や修験者の活動について、日本民俗学会第75回年会(2023年10月22日,成城大学)にて口頭発表「近世奥三河の民俗信仰と呪術―在地における宗教知識の相伝を焦点として―」を行った。また、国立歴史民俗博物館の展示プロジェクト委員として、同館の企画展「陰陽師とは何者か―うらない、まじない、こよみをつくる―」(2023年10月3日~12月10日)に参与し、本研究の成果をふまえた展示協力を行った。展覧会図録では担当箇所の解説を執筆した。さらに、III Congreso Internacional de la Asociacion Espanola de Estudios de Asia Oriental (AEEAO)(スペイン東アジア研究協会第3回大会,2023年6月9日,サラマンカ大学)にて、前年度に行った呪術書についての研究成果をふまえた口頭発表“Ancient China as a different-dimension world: The Role and Representation of China in the tale of “Minister Kibi's Adventures in China”を行った。この他、奥三河地域との比較研究の対象として、広島県備後地方の祇園信仰にまつわる在地伝承、国立歴史民俗博物館所蔵「奈良暦師吉川家旧蔵資料」の『土公神祭文』の研究を行った。
3: やや遅れている
本年度は研究の最終年度として、これまでの調査研究の成果をまとめ、研究報告書を作成する予定であった。しかし、コロナウイルスの流行時における調査研究の遅れや、本年度新たに行った書誌調査の成果を取り入れる必要があることから、報告書の作成を次年度に延期した。
本研究が取り組んできた愛知県奥三河地域の宗教儀礼に関わる文献について、特にその中でも、陰陽道の知識に由来する呪術書、暦注書、「大土公神祭文」の写本について研究を進める。また、これまでの調査研究の成果をまとめた研究報告書の作成、口頭発表、論文の執筆を行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件) 図書 (3件)
『国立歴史民俗博物館研究報告』
巻: 240 ページ: 1-15
『日本宗教文化史研究』
巻: 26 (1) ページ: 91-101
『アジア遊学』
巻: 278 ページ: 31-42
『説話文学研究』
巻: 55 ページ: 186-189
40022695521