研究課題/領域番号 |
20K12960
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
趙 泰昊 信州大学, 学術研究院人文科学系, 助教 (80868498)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 中世英文学 / 中英語ロマンス / サラセン / 改宗 / ハイブリッド / 人種 / 中世イングランド / 改宗譚 / 宗教 / 英文学 / 他者表象 / 異教徒 |
研究開始時の研究の概要 |
Saracenという呼称で表されるイスラム教徒は、中世キリスト教徒にとって最大の脅威となる他者であり、近年では中世におけるその表象がポストコロニアル批評やオリエンタリズム研究といった文脈から注目を集めている。一方で、中英語で書かれた作品に頻繁に登場するSaracen像についての研究は、未だ十分になされてはいない。本研究は、中英語ロマンス作品群において描かれるSaracen表象が、それぞれの文化的、社会的文脈に応じてどのような役割を担っていたのかを明らかにすることを目的とする。またそうした文献の分析を通して、そこに現れる宗教、人種的他者に対する心的態度を明らかにすることを目指すものである。
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研究成果の概要 |
本研究は、中英語ロマンスと呼ばれる物語ジャンルにおいて描かれるSaracenの表象が、中世後期イングランドの文化的、社会的文脈に応じてどのような役割を担っていたのかを明らかにすることを主な目的とするものである。個々の物語に登場するSaracenに対する分析を通して、中世において「人種」と「宗教」が密接に絡み合うものとして理解されていたことを再確認すると同時に、自らのアイデンティティを変更する「改宗」という現象に注目し、他者の同化を描く物語の持つ「人間集団の再定義」を試みるような機能と、その恣意性を指摘している。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
中世ヨーロッパにおいて描かれたイスラムの表象を対象とする研究は宗教と人種の問題に対する関心の高まりとともに、新たに注目されるようになっている。本研究は、近代以前には存在しなかったと考えられている「人種」という概念が「宗教」と密接に結びついたものとして存在しており、現代において他者を区別し排除する心的態度はすでに中世ヨーロッパにおいて観察できることを文学作品に対する分析を通して示している。ここで提示された問題意識は、中世イングランドにおける人々の想像力を理解する一助となるだけではなく、人種差別や他者の排除という概念がいかに恣意的に形作られたものであるかを示してくれる。
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