研究課題/領域番号 |
20K12965
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 京都大学 (2022-2023) 日本工業大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
南谷 奉良 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80826727)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 痛み / 鞭打ち / ヴィクトリア朝 / ジェイムズ・ジョイス / アイルランド / 動物の痛み / 痛みの文化史 / テキストマイニング / 文化史 / 痛み論 / 鞭打ちと体罰 / 懲罰 / 言語 |
研究開始時の研究の概要 |
痛む者の主観的な情動体験や愁訴の声を積極的に取り込む21世紀の人文学における痛み論の興隆を学術的背景に、本研究ではアイルランドの作家ジェイムズ・ジョイス(1882-1941)の描く「痛み」に注目し、初期から後期作品のなかに他者に鞭を振るって苦痛を与える複数のアクターと「痛みの無化・言語化・分有」 のフェーズ展開を見出す。そして鞭打ちとその痛みを表現した言葉を19世紀から20世紀初頭の英国・アイルランドの文化史とテクスト内部の双方において歴史化/物語化し、固有の文脈にある固有の痛みを取り出すことで、個人間の生と心身を繋ぐ、文学の言葉をメディアとした痛みの表現/共有可能性とその意義を明らかにする。
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研究実績の概要 |
2023年度には査読付き学術誌での論文掲載および2024年12月に刊行される論文集への論文投稿を行った。この業績成果に貢献したのは、(1)Hans Walter Gabler編纂によるいわゆるガブラー版『ユリシーズ』の歴史と諸問題を検討する「ハンス・ヴァルター・ガブラー氏講演「愛の復活、そのゆくえー今、ガブラー版『ユリシーズ』の意義を語る」(成城大学国際編集文献学研究センター主催)に登壇し、ガブラー氏とオンライン上で直接討議を行い草稿研究の重要性を認識できたことから繋がり、(2)9月に文献調査で訪問したTrinity CollegeとUniversity College Dublinにて、『ユリシーズ』第 12 挿話の最初期の草稿(V.A.8)の鞭打ちに関する重要な異同を発見できたことが大きい。また(3)Joyce Tower Museumで展示されているpandybatについて館員から詳細な説明を伺えたことに加えて、(4)National Museum Of IrelandでHowardena Pindellによる”Columbus”(2020)(コンゴ自由国で鞭打ちとともに実施されていた手首切断の懲罰を描いた展示)を知ることができたことも本論の記述を裏付ける上で大いに参考になった。研究期間全体を通しては、ジョイスの主要な小説三作品それぞれについての「鞭打つ者」のアクターと痛みの描出法をヴィクトリア朝からエドワード朝にかけての文化史的観点から考察し、当初の目的である「痛みの無化・言語化・分有」のフェーズ展開を見出す課題を遂行することができた。また『ユリシーズ』刊行100周年を迎える2022年に行った「Project 22 Ulysses」への参加を通じて、研究者ネットワークの拡大と専門知の社会還元を同時に行うことができたことも、本研究の一部から派生した重要な成果となった。
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