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18世紀貴族文化を基盤とした文学・思想と近代精神の誕生

研究課題

研究課題/領域番号 20K12983
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分02040:ヨーロッパ文学関連
研究機関信州大学

研究代表者

鈴木 球子  信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 講師 (00800608)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
キーワード自由思想 / 18世紀 / 18世紀フランス文学 / 貴族文化 / 唯物論 / 近代哲学 / 貴族 / フランス
研究開始時の研究の概要

本研究は、古典主義時代の価値観が終わりに向かい、近代精神が誕生しつつあった、18世紀フランスの貴族文化の実態と、それを背景として生まれた文学や哲学の特徴を、哲学書や回想録、小説などの様々な資料の調査から明らかにするものである。貴族への批判が近代市民社会の形成へ繋がる一方で、貴族のうちに広まっていた自由思想も、近代へと向かう思潮の一端を担っていたことを解明する。
本研究を通じて、フランス革命前のアンシャン・レジーム期の、複雑な社会を構成している色々な要素を分析し、その上で貴族の自由思想やサロン文化が、近代化の流れや近代以降の社会の中で果たした役割を明らかにすることができる。

研究実績の概要

2023年には、以下の3つを通して、17世紀から18世紀にかけての自由思想(libertinage)と啓蒙思想に注目し、知の在り方の変化について考察した。
1)R・パンタールが「学識ある自由思想(libertinage erudit)」と呼んだように、17世紀の自由思想家(libertin)たちは様々な文化領域において文献的博識を追求し、アリストテレスやエピクロスの哲学、懐疑論などを検討して思索を深めた。P.アザールが「自由思想家の典型」と呼んだサン=テヴルモンに、とりわけ注目した。彼は「紳士 honnete homme」を自称するサロン的教養人であった。近代以降、知は専門化していくが、その傾向が始まったのが百科全書期であり、それが自由思想期の教養の在り方との違いではないかと推測している。
2)Libertinageやlibertinの語の意味について、諸々の用例を通して検討した。Libertinageとは様々な規範(とりわけ宗教的規範)への反抗を主に意味していたが、同時に不品行なども表す語であった。それらの意味は混同されたこともあったが、P.ベールは神学的思弁と理性、そして道徳の問題を切り離して論じた。この視点が理性を掲揚する啓蒙思想に向かう転換点になったものと考えている。
3)2022年に行った、「近代合理主義の枠に収まりきらないもの」に焦点を当てようと試みたシンポジウムの内容を再考し、そこから得られた結果をまとめた。17~18世紀の自由思想家が、理性以外のもの(直観など)に目を向けていたことを明らかにし、啓蒙思想との思考的な相違を明らかにしようと試みている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究は自由思想(libertinage)が、近代化の流れの中で果たした役割を明らかにしようとするものである。また、自由思想と貴族文化との関わりも考察している。
当初は、貴族社会の実態と当時の思潮に関する資料の調査をフランスでまず行う予定であった。しかし、コロナ禍で海外出張が3年目の終わりまでできず、入手できる資料が大変限られてしまった。
3年目のフランス出張時に、フランス人研究者たちと、研究について意見交換する機会を持ったのだが、その際にlibertinageや libertinという語の意味が、計画着手時に想定していたよりもさらに多義的であることを理解した。それまで18世紀末のlibertinageと貴族の関係のみを扱ってきたが、時代をもう少し遡り、17世紀における同語の意味とその変化に注目する必要があることに気づいた。
4年目は17~18世紀の辞典におけるlibertinageやlibertinの定義の変遷をまず追い、「解放」という意味を根底に持ちつつも、その意味が揺れ動いていることを明らかにした。そして、その揺れ動きの中で、自由思想(libertinage)と当時のエリート層(貴族やサロン関係者たち)とが、密接な関連を持ち続けていたことを追っている。その上で①貴族の知識人やサロンの「紳士」と自由思想家たちの関係、②貴族文化に支えられた自由思想と啓蒙思想の相違の2つを調べているのだが、当初の予定よりも調査内容が細かくなっているため、もう少し時間が必要となった。

今後の研究の推進方策

2024年度は以下の3点を中心に研究を行っていく。
1)「学識ある自由思想家」と呼ばれる人たちが、社会的にどのような階層に所属していたのかを明らかにする。貴族やエリート層と自由思想の繋がりを検討する予定である。
2)その上で主な自由思想家たちの言説が、宗教や道徳の規範・秩序に対して、どのようなスタンスで臨んでいたのかを明らかにする。啓蒙思想との共通点について考察をする。
3)一方で自由思想と啓蒙思想との齟齬も、2つの切り口から明らかにする。①前者のサロン的(貴族的)で学識的なエリート主義と、後者と啓蒙的性質の違い、②規範や秩序からの解放を目指す自由思想と、信仰に対して理性の秩序を確立しようとした啓蒙思想の違い。
この3つを通して、自由思想が、近代化の流れの中で果たした役割を明らかにする。

報告書

(4件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2022 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 図書 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [雑誌論文] 17~18世紀フランスにおける「リベルタン」-自由思想から啓蒙思想へ-2024

    • 著者名/発表者名
      鈴木球子
    • 雑誌名

      信州大学総合人間科学研究

      巻: 18 ページ: 92-103

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 近代における精神と身体をめぐる論争ーデカルト、スピノザ、そして唯物論へー2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木球子
    • 雑誌名

      信州大学総合人間科学研究

      巻: 第16号

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] フランス革命期の王族・貴族への眼差しの変化2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木球子
    • 雑誌名

      信州大学総合人間科学研究

      巻: 15 ページ: 98-109

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [図書] アンシャン・レジームの放蕩とメランコリー-繊細さの原則2020

    • 著者名/発表者名
      ミシェル・ドゥロン(著)、鈴木球子(訳)
    • 総ページ数
      325
    • 出版者
      水声社
    • ISBN
      9784801005013
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [学会・シンポジウム開催] アンシャン・レジームから近代へ、そしてその先へ2022

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2020-04-28   更新日: 2024-12-25  

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