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抵抗のヒストリオグラフィー:現代ドイツ文学における歴史小説の諸相

研究課題

研究課題/領域番号 20K12988
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分02040:ヨーロッパ文学関連
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

粂田 文  慶應義塾大学, 理工学部(日吉), 准教授 (00756736)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
キーワードモノの詩学 / 博物館的語り / ヒストリオグラフィー / 群集 / ヨーロッパ文学 / 現代ドイツ文学 / 「物」の詩学 / 歴史小説 / 記憶 / 30年戦争 / ドイツ語圏文学 / デーブリーン / 想起の文化 / 三十年戦争
研究開始時の研究の概要

歴史学や現代思想における歴史叙述やナラティヴの議論を踏まえ、現代ドイツ文学におけるヒストリオグラフィーの諸相を明らかにする。アルフレート・デーブリーンをはじめ、ギュンター・グラス、W. G. ゼーバルト、マルセル・バイアー、ダニエル・ケールマンなど、新たな文学的歴史叙述のスタイルを切りひらいていると考えられる作家たちのテクストを「大きな物語」に抗う「歴史小説」として読み直し、このジャンルの再評価を試みる。

研究実績の概要

2022年度から文学的歴史叙述における想起のメーディウムとしての「Dinge(物)」について、21世紀の作家ジェニー・エルペンベックと20世紀の作家アルフレート・デーブリーンのテキストを中心に研究を進めている。2023年度は前年度の研究成果を研究発表や論文としてまとめた。概要は以下の通りである: 1)エルペンベックの家族小説や自伝的テキストにおける移動する小道具のパフォーマティブな仕掛けを分析し、小説におけるモノとそれを扱う登場人物の身振りによって読者の読みのペースを狂わせ、厄災の記憶の忘却や歴史化、個人的な経験の物語化等に抗うテキストの特徴を明らかにした。(論文発表:「歴史叙述の物語 (3) 小道具の扱い :J・エルペンベック『すべての日々の終わり』における彷徨えるモノの詩学」 )、2)デーブリーンの小説におけるモノの群れを「共振」や「発酵」というキータームを介して分析し、ワイマール共和政時代の群集をめぐる言説(非理性的な人間の群れ、共同体への憧れ etc)から逸脱するその群集表象の現代性について考察した。そして、生態系のパースペクティヴから群集を捉えるデーブリーンの群集表象が、地球上で群れるあらゆる存在物の創発的進化や自己調整力に意識を促し、その物質性と多様性を浮き彫りにすることを明らかにした。(口頭発表:「発酵する群れ、発熱するテキスト:アルフレート・デーブリーン『山 海 巨人たち』における文学的テルモグラフィー」)、3)文学テキストにおける「歴史の博物館化」「文学テキストにおける博物館的な語り」について思考を重ねており、それを補強するために独墺仏の歴史博物館やホロコースト関連の記念館に足を運び、展示方法に関する調査を行った。4)デーブリーンの歴史小説『November 1918』第一巻(共訳)の推敲作業のやり直しを終え訳原稿を出版社に再提出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2020年度、2021年度とコロナの影響で研究が遅れていたが、在外研究(2022年度、2023年度)でだいぶ遅れを取り戻すことができた。研究期間を1年延長したので目標の達成は可能であると考えている。

今後の研究の推進方策

これまで文学における歴史叙述という観点から20世紀や21世紀のさまざまな作家たちのテキストを個別に読んで研究してきた。現在、そうした作家たちを文学テキストにおける「モノ」を介して結びつけられるのではないかと考えている。本研究プロジェクトの最終年度は、これまでの研究成果を踏まえて、文学的歴史叙述における抵抗の身振りとしてのモノの扱いに注目しながら、個々の作家を結びつける作業を進めて行きたい。これにより時系列や主義や流派によらない「モノ」を介したネットワークとしての文学史を編むための土台ができるだろう。本プロジェクトを順調に終えた暁には、テキストにおけるモノ・空間・ナラティブの相互関係から、モダニズムから壁崩壊後に至るまでのドイツ語圏文学におけるヒストリオグラフィーの諸相を浮かび上がらせることができれば幸いである。2024年度あるいは2025年度にドイツから研究者を招聘し関連テーマの研究会を開催したいと考えており、関係各所とコンタクトをとって企画を進めているところである。

報告書

(4件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022 2021 2020

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Als Marmorfiguren in der Siegesallee die Geschichte gegen den Strich buersteten. Aspekte musealen Erzaehlers in Alfred Doeblins November 1918.2023

    • 著者名/発表者名
      Aya Kumeda
    • 雑誌名

      Neue Beitraege zur Germanistik. 2022(Iudicium)

      巻: 21 (1) ページ: 91-108

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 歴史叙述の物語 (3) 小道具の扱い -J・エルペンベック『すべての日々の終わり』における彷徨えるモノの詩学2023

    • 著者名/発表者名
      粂田 文
    • 雑誌名

      慶應義塾大学日吉紀要『ドイツ語学・文学』(慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会)

      巻: 64 ページ: 25-43

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 歴史叙述の物語(2) ポストモダン文学における30年戦争-ダニエル・ケールマン『ティル』について2022

    • 著者名/発表者名
      粂田 文
    • 雑誌名

      慶應義塾大学 日吉紀要 ドイツ語・文学

      巻: 62 ページ: 137-154

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 思い出しながら語る、語りながら思い出す-マルセル・バイアー『カルテンブルク』における中動態らしきもの2022

    • 著者名/発表者名
      粂田 文
    • 雑誌名

      言語の中動態、思考の中動態(水声社)

      巻: ー ページ: 223-253

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] マルセル・バイアー『カルテンブルク』における想起のディスクールーエミール・ヴァンヴェニストを手がかりに2020

    • 著者名/発表者名
      粂田 文
    • 雑誌名

      上智大学ドイツ文学論集

      巻: 57 ページ: 45-69

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [学会発表] 発酵する群れ、発熱するテキスト:アルフレート・デーブリーン『山 海 巨人たち』における文学的テルモグラフィー2023

    • 著者名/発表者名
      粂田 文
    • 学会等名
      日本独文学会秋季研究発表会(シンポジウム「「群集」を再訪する―ただしパトスなしにー両大戦間期ドイツ語圏の文学における群集表象の再検討」)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ”Till"と”Tyll" -語りの技術としての ”バタフライ効果”. クレメンス・J・ゼッツとダニエル・ケールマンによる『ティル・オイレンシュピーゲル』 の焼き直し2021

    • 著者名/発表者名
      粂田 文
    • 学会等名
      クレメンス・J・ゼッツーポストヒューマニズムの文学(都立大学)
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] ダニエル・ケールマンの歴史小説についてー『Tyll』を中心に2021

    • 著者名/発表者名
      粂田 文
    • 学会等名
      第75回ドイツ現代文学ゼミナール
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書

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公開日: 2020-04-28   更新日: 2024-12-25  

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