研究課題/領域番号 |
20K13000
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
橋本 大樹 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 助教 (90867300)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 予測可能性 / 頻度 / 音声的余剰性 / Exemplar Theory / コミュニケーション / 音声信号 / 情報理論 / 自然発話コーパス / 音韻的余剰性 / 情報量 / コーパス / 語 |
研究開始時の研究の概要 |
語の音声実現は状況により様々である。丁寧にゆっくり発音されることもあれば、粗雑に短く発音されることもある。本研究では語の持つ情報量に着目して、語の持つ情報量と音声的性質 (例:持続時間、ピッチ値、フォルマント値など) の関係を明らかにする。この関係を明らかにすることで、話者がどの様にコミュニケーションを最適化しているかに関わる仮説を明らかにすることができる。情報伝達の正確さと簡略さのトレードオフを、話者がどの様な音声的余剰性を変更することで行っているかを明らかにすることができる。
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研究実績の概要 |
情報量と音声的余剰性の研究において、多くの場合「音声の持続時間~情報量」の関係を明らかにすることが一般的である。情報量の規定は、2021年に発表した Journal of Phonetics で論じたように、頻度と予測可能性を議論することが一般的である。予測可能性は、文脈から規定することが多い。 本年度は予測可能性を動詞のパラダイムから規定することで、新しい情報量の効果を検証した。この予測可能性を活用内予測可能性 (conjugation predictability) と呼び、この予測可能性も音声的余剰性の決定に影響することを明らかにした。 例えば「異なる」という語は「まとめる」という語に比べて、基本形 (いわゆる終止形と連体形をまとめたもの) として用いられることが多い。つまり p(基本形|異なる)は、p(基本形|まとめる)よりも高い確率を持つ。今年度 Morphology (Springer Nature) で発表した論文では、p(基本形|動詞)が高いほど、基本形は短い持続時間で発音されることを明らかにした。 このことを Exemplar Theory を用いて以下の様に解釈した。我々は音声産出において、語の node にアクセスした後に活用形の node にアクセスしている。語の node にアクセスしてから活用形の node にアクセスするまでの時間に応じて、我々の音声産出のスピードが変化する。活用形の node に多くの exemplar が結び付いていると、それだけ node へのアクセスが速くなる。アクセスが速い分、調音運動が容易になり、音声的余剰性が減る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コーパス研究に関して、当初予定していた内容に関して概ね完了することが出来た。予測可能性の効果に関して他言語における先行研究の再現に留まらず、新しい形の予測可能性の効果の検証や、持続時間以外の音響特性の変異を研究することが出来た。当初の予定を概ね達成できたことから、順調に進展していると言える。 業績に関していえば、今年度は本研究課題に関して国際会議 (Laboratory Phonology) で発表したことに加えて、国際誌 (Morphology) に論文を掲載することが出来た。どちらも音声学音韻論分野で著名な会議・雑誌であるから、有意義な学術業績を残すことが出来たと言える。
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今後の研究の推進方策 |
コーパス研究自体は概ね完了している。最後に論文として未発表の内容があるため、その内容を論文として発表することでこの研究課題を締めくくりたいと考えている。研究自体は終わっており、論文もほとんど書き終わっている状況である。補助事業期間延長手続きが承認されたことから、2023年度中に発表できるように査読の通過を目指す。
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