研究課題/領域番号 |
20K13002
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 明治学院大学 (2022-2023) 金沢大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
日高 知恵実 明治学院大学, 教養教育センター, 助教 (70825174)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 中国語 / 漢語方言 / 社会言語学 / 方言グッズ / 方言コンテンツ / 方言の活用 / 言語景観 / 地域イメージ / 方言の受容と活用 / 官話 / メディアコンテンツ |
研究開始時の研究の概要 |
中国では現在、急速な社会の変化に伴い、「在来の土地のことば」としての方言が次第に衰退しつつある。しかし一方で、方言を生活語以外で積極的に受容・活用しようとする新たな動きも起きている。 そこで本研究では、①中国における方言のあり方の変化、②官話方言地域における方言活用の地域的特徴、③官話方言コンテンツにあらわれる言語的諸特徴の3点について、日本の方言研究・社会言語学的研究の成果も取り入れながら考察を進める。これは通時性・地域性に着目した「巨視的観点」、方言コンテンツの言語的特徴に着目した「微視的観点」の両面からアプローチを試みるもので、中国語の方言研究に新たな方向性を確立することが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、中国における方言の新たな受容や活用の実態を解明することにある。4年計画の4年目にあたる令和5年度は、主に以下の内容を進めた。 (1)中国語方言グッズのデータ整理:これまでに引き続き、中国各地における中国語方言グッズを収集し、学生アルバイターの協力を得ながら、画像の整理や表記されている方言データの抽出作業をおこなった。 (2)現地調査によるデータ収集:令和2年から続いていたコロナ政策が緩和されたことを受け、今年度は本研究課題において初めての現地調査を実施することができた。8月に内モンゴルフフホト、9月に上海へそれぞれ渡航し、言語景観を中心とした方言の活用事例を確認した。 (3)方言の活用に関する事例研究:本年度は主に次の2つのテーマに基づく事例研究を進めた。①中国上海市南郊外に位置する奉賢区金匯鎮の取り組みを例として、まずこの地域において、方言を活用しようという「選択」がなされていること、さらに公共の空間において方言が景観として可視化される際には、語彙や表記に関わる様々な「選択」がなされていることについて考察し、その上で、そうした「選択」の根底にはどのような「意識」が動いているのかについて分析した。②中国河南省における洛陽や開封などの河南方言グッズを対象とし、そこに反映されている地域イメージやその特徴について考察を進めた。その結果、河南方言グッズは経済活動の結果として、「悠久の歴史」と「嘲笑の対象」という、相反する2つの地域イメージの中に商品価値を見出していることが明らかとなった。 (4)研究成果を国内外の学会や研究会において発表し、その一部はすでに論文として刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述したように、令和5年度は現地調査を2回実施し、またその成果を公開することができた。特に上海市郊外の事例研究は、「中国における官話方言の新たな受容・活用の実態解明」という、本研究課題が当初想定していた射程からさらに発展させたものとして位置付けることができ、意義深いものとなった。 その一方で、研究課題全体の達成度としては、コロナ禍によって過去3年間、中国への渡航が叶わなかったことが大きく影響しており、当初の目標からやや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本課題申請当初は令和5年度を最終年度としていたが、上記の理由により、研究期間を1年間延長することにした。来年度も引き続き、事例研究を前進させるとともに、本研究課題の総括に尽力する。また、これまで整理を進めてきた中国語方言グッズのデータが手元に相当数あることから、研究期間内にデータベースの作成・公開もおこなう。
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