研究課題/領域番号 |
20K13022
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
鋤田 智彦 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (60816031)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 御製増訂清文鑑 / 満文西遊記 / 満漢資料 / 言語接触 / 漢字音 / 中国近世語音 / 音韻逢源 / 満文水滸伝 / 近世語音 / 清書対音協字 / 近世中国語 / 満洲語 / 満漢対音 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、清朝の公用語の一つであった満洲語を記す満洲文字で書かれた漢字音を分析することにより、当時の中国語音の様子を明らかにしようとするものである。『満文三国志』『満文金瓶梅』などの満洲語訳小説類、『清書切音・対音』『音韻逢源』などの字音書類、『御製増訂清文鑑』などの辞典類を主な研究の対象とする。それぞれの資料に見える漢字音について、個別に詳細な分析を加えるとともに各資料の対照を行い、近世中国語音の一端を提示する。
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研究実績の概要 |
当該年度は18世紀後半に編纂された大型の満洲語辞書『御製増訂清文鑑』に見える満洲文字表記された漢字音についての分析、検討を行った。鋤田智彦(2023a「『御製増訂清文鑑』の漢字音」、『アルテス・リベラレス』112:pp.57-72)では本書に見える漢字音について韻母、声母、声調それぞれの面からその音系の特徴を示し、あわせて同音字表を作成した。同音字表では一つの字が複数の字音を持つ場合、それぞれを対照しやすいように加えた。そこからは18世紀後半の漢字音に対する認識を知ることができる。『御製増訂清文鑑』における入声由来字の表記を見てみるとそれまで優勢であった南京音から北京音の割合が増えてくる様子が明らかとなり、また、尖団音字についてもその由来にあわない表記もいくつか見られ、実際には区別があいまいになってきていた様子を窺い知ることができる。 また、当該年度は満洲語訳された小説類として新たに『満文西遊記』についての研究も進めた。大阪大学が所蔵する抄本『満文西遊記』について成立時期やその背景をまとめたものが鋤田智彦(2023b「大阪大学蔵『満文西遊記』について」、『中国文学研究』49、pp.1-17)であり、全100回の回目をまとめたものが鋤田智彦(2023c「大阪大学所蔵『満文西遊記』回目」、『アルテス・リベラレス』113、pp.159-177)である。大阪大学蔵『満文西遊記』については存在は知られていたものの体系的な県級は行われておらず、今回の分析によって世徳堂本あるいは李卓吾本といった明刊本系統の影響を大きく受けつつもそれらとは異なった清刊本系統と合致する特徴も見られ、その底本、あるいは抄写時期についてはさらに探究の余地はあるが、その際に『満文西遊記』に見られる漢字音表記の特徴が大きな手がかりとなると考えられる。 他にも満洲人の「言葉」「文字」等に関する認識についての検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年は所蔵資料をオンライン上で公開することも多く、また、中国では各種影印資料の出版も進んでおり、それらの資料を活用することで研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度は18世紀後半の漢字音を示す『御製増訂清文鑑』における漢字音表記に対する分析を通し、当時の漢字音の様相の一端に触れることができた。それ以前の年度に行った17世紀終わり頃の『清書対音協字』、19世紀半ばの『音韻逢源』についてのこれまでの研究成果を踏まえ、最終年度となる2024年度はこれらの資料を同一の基準の下で通時的な表記の変遷を理解しやすくまとめ上げることを考えている。これにより中国近世音の清代における変化を知ることができ、あわせて並行して行ってきた『満文水滸伝』『満文西遊記』などの抄本の抄写時期を特定する手がかりとしたい。
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