研究課題/領域番号 |
20K13041
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 金沢学院大学 (2021-2022) 北陸学院大学短期大学部 (2020) |
研究代表者 |
高島 彬 金沢学院大学, 文学部, 講師 (00843294)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 認知言語学 / 日英対照 / 物語論 / 証拠性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は「証拠性(Evidentiality)」に関わる日本語と英語の表現の使用実態を調査し、証拠性の使用にどのような動機付けがあるのかを明らかにすることにある。これまで通言語的に証拠性にはどのような種類の標識や意味があるのかが議論されてきたが、同じ状況を異なる言語で表現しようとした時に、証拠性の情報を明示する言語と明示しない言語があるといった使用実態の揺れに関してはあまり注目されていない。このような問題に対して、認知言語学と物語論(ナラトロジー)の観点を援用し、日本語と英語の物語における証拠性の使用実態を把握し、物語の構造や視点効果と証拠性の情報の有標化との関係をについて調査する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は「証拠性(Evidentiality)」を表す日本語と英語の表現の使用実態を調査し、それらの使用にはどのような動機づけがあるのかを認知言語学と物語論の理論的枠組みを援用して明らかにすることにある。 3年目にあたるR4年度は、日英対照研究のための対訳コーパスのデータ収集を行いつつ、物語論と認知言語学の理論的枠組みの整合性を検討するため、語りの詳述性が日本語の言語変化に影響を与える事例について検証した。具体的には、日本語の「-感」が複合語を構成する接尾辞相当から疑似的な発話を前部要素にとる疑似引用表現への変化について、複合語「感」では言い足りない気持ちを、ミメーシス性を高めることでその場の体験をより詳述化して表現しようとする認知的動機づけが関係していることを主張した。 この研究で援用したFictive Interactionはこれまで英語や中国語などの日本語以外の言語にも確認されている現象であるが、本研究ではこのFictive Interactionが発生する要因として、物語論におけるミメーシス性の高まりという動機づけがあることを主張した。この研究の成果は物語論と認知言語学の理論的枠組みを援用した言語分析が十分に可能であることを示すものであるとともに、他言語においても確認されている現象であることから、本研究で示した認知的動機付けは人間の一般的認知能力である可能性を示したという点で意義があると考えられる。本年度の研究成果は、2022年に学会にて発表しており、学術論文として2023年に刊行される論文集に掲載される予定である。 このような成果の一方で、対訳コーパス構築のためのデータに関して、コロナウィルスの関係で人手を集めることができておらず、予定よりも進捗状況は遅れている。次年度では人手を集め、より多くのデータを収集を試みるとともに、調査結果を発表していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R4年度は認知言語学と物語論の理論的枠組みの整合性を検討し、証拠性を分析するための理論構築を主な目的とした。また、並行して実証的な日英対照研究のための対訳コーパスのデータ収集を行った。 本年度の成果として、日本語の疑似引用表現「-感」が発生する動機づけについて、認知言語学と物語論を援用することで説明可能であることを示した。本研究は、2022年度の学会で発表し、学術論文として2023年度に刊行される論文集に掲載予定である。 対訳コーパスの構築に関しては、コロナウィルスの影響により、データ収集のために人手を集めることができていないこともあり、対訳のある日本語と英語の小説のデータ収集とその整理に時間を要しており、必要なデータ量を確保できていないのが現状である。次年度はコロナウィルスの終息の兆候もあるため、人手を確保することで、対訳のデータ量を増やす予定である。
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今後の研究の推進方策 |
R4年度も引き続き、コロナウィルスの影響が残っており、学会や有識者との会合など対面でのコミュニケーションの実施が制限されていたため、旅費や人件費が使用できない状況にあった。 次年度は対訳コーパス構築のためのデータ量を確保するため、人手を増やし、データの収集と整理を行っていく。そして、これまで検証してきた理論的枠組みの整合性を対訳コーパスを用いて、実証的な研究を試み、学会や学術論文を通して、研究結果を随時発表していく。
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