研究課題/領域番号 |
20K13046
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02070:日本語学関連
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研究機関 | 青山学院大学 (2023) 金沢大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
大江 元貴 青山学院大学, 文学部, 准教授 (30733620)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2020年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | 談話文 / 脱談話文 / 終助詞 / 感動詞 / 談話ジャンル / パラ言語 / 非言語 / 役割語 / 左方転位 / 韻律 / 左方転位構文 / 嘲り文 / ポーズ / イントネーション / 評価的態度 / とりたて助詞 / 現代日本語文法 / 独立語文 / 述語文 / 談話 / 多重文法 / 定型表現 / 話しことば |
研究開始時の研究の概要 |
話しことばでは,これまで現代日本語文法研究が中心的に扱ってきた「述語文」(述語を持つ文)だけでなく,多様な「独立語文」(述語を持たない文)が観察される。さらに,述語文と独立語文の中間的な性格を持つような文も観察されるが,従来の枠組みではこれらの文をうまく扱えなかった。本研究は,独立語文と述語文の中間的言語現象を,特に話しことばの中から掘り起こして,文法・談話・韻律の各側面から分析する。これによって,独立語文と述語文の連続性の実態を解明し,典型的独立語文から典型的述語文にわたる多様な「文」を体系的に捉える枠組みを構築する。
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研究実績の概要 |
前年度までの研究の蓄積により、「独立語文/述語文」という対立で論じられてきた文類型の特徴は、談話依存性(文と談話との結びつきの強さ)というより大きな視点から捉え直されるという示唆を得ていた。本年度はこの文論に関する新たな枠組みの粗描を論文にまとめ刊行することができた(「文を多面的・多層的に捉える:話し言葉の文法研究にとっての「文」の可能性」『日本語音声コミュニケーション研究』12)。具体的には、これまで「文」と呼ばれてきたまとまりには少なくとも、「談話文:具体的な談話場においてはじめて成立する、構造と言語行動の統一体としての文」と「脱談話文:具体的な談話場を捨象した、構造と意味の統一体としての文」という2つのレベルがあり、独立語文は談話文としてのみ捉えられる文として位置づけられることを明らかにした。 さらに、分析の視点を拡張したことにより、独立語文をめぐる言語現象を伝統的な文成立論に関わる問題に留めずに、さらに大きな問題系に接続させる2つの方向を見出すことができた。1つは、パラ言語・非言語研究との接続である。終助詞・感動詞などの言語形式と、韻律などのパラ言語や表情・ジェスチャーなどの非言語は、談話文のレベルでは同種の働きをする要素とみなすことができる。この接点は「文の身体性」という問題系に切り込む足がかりとなる。もう1つは、役割語・キャラ研究との接続である。ある言語表現が特定の談話ジャンルと強く結びついているという現象は、ある言語表現が特定の人物像・キャラクタと強く結びついているという現象と平行的に考えることができる。この接点は「文の社会性」という問題系につながる。この2つの論点については、それぞれ準備的考察を2つの講演会・研究会(岡山大学文学部日本語学講演会、「テキストの中の文法」第5回研究発表会)で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文論の新たな枠組みに関する論文を刊行できた点や、研究当初には想定していなかった文の身体性・社会性という論点が見出された点は大きな進展であるが、個々の構文の分析が遅れており、研究の総括には至らず1年研究繰越をして対応することになったため、「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度が最終年度となるため、左方転位構文や終助詞文などの個別の構文の記述をまとめた上で、理論的考察を含めた総括を行う。個別の構文の記述的成果は学会誌の論文として投稿する。理論的考察については他の成果とあわせて2025年度以降に単著として成果公開ができるよう準備を進める。
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