研究課題/領域番号 |
20K13095
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02090:日本語教育関連
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研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
宮岸 哲也 安田女子大学, 文学部, 教授 (30289269)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 日本語教育文法 / 対照研究 / 習得研究 / シンハラ語 / 日本語 / 文法 / 発音 / 教材開発 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はスリランカの公用語シンハラ語と日本語との、音声と文法に関する包括的対照研究を集中的に行い、その成果をシンハラ語母語話者対象の日本語教材の形で示す。そして、この研究を学習者の母語を考慮した日本語教育文法の教材開発のモデル・ケースとして紹介することで、多国籍の外国人材の受け入れが急務の国内状況において、本研究が多言語母語話者のための短期速習型日本語教育の環境整備の一端を担い得ることを主張する。
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研究実績の概要 |
シンハラ語母語話者用日本語教育文法書作成に資する研究をチームで行った。宮岸は日本語アスペクト表現の習得で、有生性の有無によるシンハラ語の補助動詞の使い分けが負の転移を及ぼし得ることと、シンハラ語数詞類別詞句が複数形名詞を義務的にとるため「兄達1人」のような不適格な日本語がシンハラ語では適格になることを指摘した。D.Chandralal氏はシンハラ語の場所格名詞が存在の場所のほか名詞も修飾でき、この点で日本語の格助詞「の」と部分的に重なるが、場所としての解釈に限定されることの他、新聞やメディアにおけるシンハラ語の乱れについて指摘した。K.G.K De Silva氏はシンハラ語の受動動詞を単純動詞と複合動詞に分け、二項述語階層の観点から整理した他、能動文を受動文に変える時は、日本語の場合と異なり、動作者と被動者の語順に変化が見られないことと、被動者の格標識が変化する場合とない場合があることを指摘した。吉田樹生氏はシンハラ語の非意図的動作主構文の関係節化の対象にatin句がなり得ないこと、シンハラ語の項焦点の標示手段のうち助詞によるものは他候補の否定という対比の意味を持つことと、焦点は助詞または語順のいずれか一つの方法によって標示される傾向があることを指摘した。Januka Edirimanna Mohotti氏は日本語動詞「とる」とシンハラ語動詞gannawaを例にコロケーションの対照研究の必要性を論じた。Hettiyahandi, Wathsala De Silva氏は「させていただく」というシンハラ語にはない表現の効果的な指導法を提案した。Dassanayaka Oshadhi氏はシンハラ語母語話者の日本語自他動詞の習得のし易さがeru-uの形態的対立パターンを持つものに有意に見られることを指摘した。永井絢子氏は日本語非母語話者を考慮した文法書の構成と記述について提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
日本語教育文法書を作成するためのシンハラ語研究、及び日本語とシンハラ語の対照研究は、量的にも質的にも着実に進んでいる。特にアスペクトや受身に関する対照研究は、日本語教育文法書の記述にも生かせるデータを加えることが出来た。しかし、それでもコロナ禍による研究の遅れはまだ取り戻せていないのが現状である。対面での研究会議ができるようになったのは2022年の9月からであり、2023年3月には2回目の対面での研究会議を行った。スリランカでの現地調査ができるようになったのは、調査協力者による2022年の12月の調査からであり、研究代表者によるものは2023年の2月になってからの2週間だけであった。そのため、文法書を作成する上でのデータがまだ不足しており、現地の日本語教師との意見交換も実現できていない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の1年間の延長が認められたので、今後はまだ着手できていない条件表現について、新たに研究協力者として加わったWeerasinghe Hetti Arachchilage Devika氏と共同で対照研究を進めていく予定である。同時に、今まで蓄積してきた対照研究と習得研究のデータを文法書に加筆していくことに作業の軸を移し、日本語非母語話者に配慮した構成と記述による具体的な執筆を、代表者を中心にグループで進めていきたい。更にはスリランカへの渡航も可能な限り実現させ、現地での調査とスリランカ人日本語教師との意見交換を行いながら文法書の内容の妥当性を探っていきたい。
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