研究課題/領域番号 |
20K13098
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02090:日本語教育関連
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研究機関 | 神戸常盤大学 (2023) 神戸常盤大学短期大学部 (2020-2022) |
研究代表者 |
高橋 由希子 神戸常盤大学, 保健科学部, 教授 (10582778)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 外国にルーツをもつ子ども / 口腔保健教育 / オーラルサポートモデル / ハンドブック / ライフステージ別 / 子育て支援 |
研究開始時の研究の概要 |
就学前の子どもに対するサービスには様々な取り組みがあるが、全国で急増している両親のいずれかが外国籍である「外国にルーツをもつ子ども」は対象になっておらず、これまで彼らの子育てを支援しようという動きはなかった。そこで、彼らの子育てに対する不安や悩み、口腔衛生や食べ方等の疑問を母語で聞き取り調査を行う。そして、彼らが日本で健康に暮らすために必要な支援を明らかにする。その上で、母語がそれぞれ異なる外国人にも簡単でわかりやすい日本語で「外国にルーツをもつ子どもと親のための口腔保健教育ハンドブック」を開発し、外国にルーツをもつ子どものオーラルサポートモデルとして様々な地域に応用できると考える。
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研究実績の概要 |
海外では18歳以下の子どもを対象に、政府所属の歯科衛生士や歯科看護師が口腔保健教育を担っており、その効果について報告されている。国が治療費を全て負担しているところもあり、子どもたちの口腔管理は、年齢や学校により切れ目なく行われている。 一方、日本では、小学校から高校には養護教諭が各学校一名ずつ配属されているが、未就学児にいたっては、保護者が意識的に歯科に通院させない場合には、口腔保健教育を受ける機会も得ることができない。日本の乳幼児歯科健診には、集団健診と個別健診があり、実施方法については、市町村により画一的ではない。そのため、健診後のフォローアップには特に規定がなく、現場に委ねられているのが現状であり、地域による支援状況にも違いがでてくる。特に、保護者が口腔に関する知識が少ない場合や関心のない場合には、食べ方や発音などの口腔に関する発達・発育の遅れや口腔衛生習慣の獲得が子どもの生活やコミュニケーションに影響を及ぼすことにも気が付かない。 その上、両親のいずれかが外国籍である「外国にルーツをもつ子ども」は、全国で急増しているにも関わらず、彼らは対象となっておらず、支援しようという動きはなかった。そこで、彼らの口腔に関連した子育てに対する不安や悩みを母語で聞き取り、困りごとの調査を行う。そして、彼らが日本で健康に暮らすために必要な支援を明らかにする。その上で、 母語がそれぞれ異なる外国人にも簡単でわかりやすい日本語、すなわち、やさしい日本語で、PCDAサイクルに沿った評価手法を用いて「外国にルーツをもつ子どもと親のための口腔保健教育ハンドブック」を開発する。これは外国にルーツをもつ子どものオーラルサポートモデルとして様々な地域に応用することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は、本学附属の子育て総合支援施設で月に2回ずつ3施設で「歯っピー相談会」を行った。「歯っピー相談会」の内容は歯科医師および歯科衛生士が利用者に対し、やさしい日本語で作成した問診票をもとにヒアリングを行い、必要に応じて子どもの口腔内観察を行い、口腔の困りごとについての相談会である。利用者は0歳から3歳未満の日本人および外国にルーツをもつ子どもと親で、相談内容は、食べ方や発音などの口腔に関する発達・発育に関する内容で、多岐にわたっていた。2021年度は新型コロナウイルスの流行により、予約制で行うなど必要に応じ感染対策を行ったが、利用者数の減少は否めなかった。2022年は、ワクチン接種が急速に進み、「歯っピー相談会」の利用者が増加したため、2023年に「歯っピー相談会」利用者の概要について報告した。 2023年は、神戸市長田区にある神戸国際コミュニティセンターより「食材提供と専門家による相談会」への協力依頼があり、来場した語学留学生に対し、地域の語学留学生が安心して健康に生活するための健康支援を行った。兵庫県内の全留学生数のうち、日本語学校で学ぶ語学留学生数は兵庫県全体の18%で、20代の学生が多かった。問診を行った語学留学生の中には口腔に関連した困りごとを抱えているものが認められた。 また、神戸市ではウクライナ避難民の受け入れを行っており、生活基盤を築いたウクライナ避難民の支援ニーズに変化がみられた。言語の障壁、保健医療へのアクセス困難などより、健康面への支援の必要性が認められた。そこで、健康支援の一環として、本学は避難民への口腔保健面への支援を行うこととなった。歯科健診を受けたウクライナ避難民は何らかの口腔疾患を抱えていることが認められた。 この4年間で、外国にルーツのある様々な年齢層に健康に対するニーズが行き届いていない現状が明らかになっている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度から2年間はコロナ禍において様々なイベントが中止となり、本学附属の子育て総合支援施設の利用者が減少した。また、1歳6か月児健診や3歳児健診も一部延期となり、再開後も部外者の参加は禁止となった。外国にルーツをもつ子どもと親に対する聞き取りやインタビュー等のためのコミュニティの視察・調査も困難であった。2022年度は、ワクチン接種が急速に進み、新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」に変化したため、本学附属の子育て総合支援施設での「歯っピー相談会」の利用者が増加し、概要を日本健康体力栄養学会で報告した。研究対象としている外国籍の親子は神戸市の割合に近かった。 2023年度、神戸市長田区にある神戸国際コミュニティセンター開催の「国際ファミリーのためのCAFE KICC」より、協力依頼があり参加した。その際、病院への受診の仕方、母国とのギャップなどについての相談を受けた。今後は日本国籍であっても外国人、他国に在住し帰国したご家族等など「外国にルーツのある子どもと親」にインタビューを行い、これまでの本学附属の子育て総合支援施設の利用者の問診表の分析と合わせ、問題解決につながる口腔保健教育ハンドブックを作成する。 また、神戸市長田区の語学留学生が安心して健康に生活するための健康支援を今後も継続していく。長田区の語学留学生は口腔に関連した困りごとを抱えていることは認められたが、疾患予防に対しどのように考えているかについては不明である。それぞれの母国の文化や考え方を把握し、個人の健康に対する意識を理解し、ニーズに合った情報提供を行いたいと考える。さらに、彼らの健康に対する意識を高める支援がしたいと考える。
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