研究課題/領域番号 |
20K13131
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
大瀧 綾乃 静岡大学, 教育学部, 講師 (60840676)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 第二言語習得 / 英語学習者 / 他動詞用法・自動詞用法 / 他動詞・自動詞・自他両用動詞 / 主語の有生性 / 明示的文法指導の効果 / 直接否定証拠 / 英文法指導法の開発 / 無生物主語の習得 / 英語指導法の開発 / 動詞の用法 / 自動詞・他動詞・自他両用動詞 / 明示的文法指導 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、「日本語を母語とする英語学習者が、英語能力を効果的に向上させるため、文の核である動詞の用法(他動詞用法・自動詞用法)を正しく理解し、使用できるようにするための効果的な指導法を開発し、その効果を検証すること」である。英語学習者は他動詞と自動詞の混同という動詞の用法の誤りをすることが観察され、先行研究では誤りを引き起こす要因が複数提案されてきた。しかし、どれも決定的な要因ではないと言える。そこで動詞の用法に対する習得調査を行い、習得困難な動詞とその原因を明らかにする。これに基づき動詞の用法に関する指導法を開発し、長期的な有効性を検証し、本研究成果を教室での英文法指導に活用する。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本語母語の英語学習者が動詞の用法の習得を困難にする要因を調査すること、その結果に基づいて学習者が動詞の用法を正しく理解できるための指導法を開発、検証することである。 令和4年度は2点の研究活動を実施した。1点目は自動詞に対する明示的文法指導の効果検証実験の成果(大瀧, 2021, 2022)をまとめ、調査した動詞別に指導の効果についても分析した(大瀧, 2023)。英語学習者に自動詞に対する明示的文法指導を実施した結果、自動詞用法を正しく理解することは一定の効果が観察された一方で、他動詞用法として用いた非文法的な文を正しく理解することは困難であることが分かった。このような他動詞用法として用いた非文法的な文に対する理解を高めるためには、教師が直接否定証拠を与え、誤りを提示することが必要と考察した。また、明示的文法指導の効果は調査した自動詞全てに同じように効果的である訳ではなく、効果がみられた動詞とみられなかった動詞があることが分かった。その要因については今後調査を続ける必要がある。 2点目は、主として他動詞として用いられる動詞の用法の習得に焦点を当て、習得を困難にする要因について先行研究で明らかになっている点と問題点をまとめた。英語学習者は他動詞を伴う文において、目的語が脱落した非文法的な文を文法的な文であると誤って判断する傾向があることが分かっているが(Wakabayashi & Negishi, 2003; Yuan, 1997他)、決定的な要因は明らかになっていない。先行研究を整理し、母語からの負の転移の有無、文構造からの影響、脱落しやすい目的語と目的語脱落が多く観られる他動詞の特徴など明らかにすべき観点を整理した。新たに目的語脱落の要因を検証するため、文法性判断テスト実施のための準備を行った。令和5年度にテストを実施し、目的語脱落の要因を分析する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本科研費プロジェクトは、動詞の用法の習得調査と効果的な指導法の開発を目指すものである。他動詞、自動詞、自他両用動詞の3種類の動詞それぞれについて調査を行っており、うち自動詞についてはおおむね順調に研究を進めることができた。 令和4年度は、本科研費プロジェクトを通して行った2種類の自動詞の明示的文法指導に関する実験結果(大瀧, 2021, 2022)に新たに実験分析データ(個別動詞の分析)を加え、自動詞への明示的文法指導についてこれまで明らかにしたことを整理、考察し、その内容を書籍『第二言語習得研究の科学2 言語の指導』(2023年, くろしお出版)の第3章「他動詞と自動詞の区別と明示的指導―非対格動詞の場合―」(著者 大瀧綾乃)として発表することができた。また本科研費プロジェクト担当者は博士論文(Otaki, 2019)にて自他両用動詞についても調査を実施してきた。 このように本科研費プロジェクト担当者は、これまで自動詞と自他両用動詞に関する調査を行うことができたが、残りの他動詞に焦点を当てた研究も実施する必要がある。そのため本科研費プロジェクトを1年間延長し、他動詞に焦点を当てた調査を行うこととした。令和4年度は他動詞を伴う文への正しい理解に焦点を当て、その理解を困難にする目的語脱落現象の要因としてこれまで明らかになっていることを先行研究の整理を通してまとめてきた。令和5年度は実際に他動詞用法の習得についての調査を行い、調査データより、学習者が目的語脱落を許す傾向がある要因についてあらためて考察を行う予定である。考察を基に、学習者の他動詞への正しい理解を高め、目的語脱落の誤りが減少する明示的文法指導法を考案し、その効果を実証する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、学習者が他動詞を伴い目的語が脱落した非文法的な文を許す現象について、その要因を検証する調査を実施する。具体的には、文法性判断テストを作成してテストを実施し、そのデータを分析する。分析では、主に文の構造からの影響、目的語である名詞句の特徴(有生性)からの影響、他動詞が持つ意味的特徴からの影響等の側面から目的語の脱落を許す要因について検証する。それらの考察を基に、学習者の他動詞を伴う文に対する正しい理解を高めるための明示的文法指導を考案し、その効果を検証する予定である。 最終的に、上記の他動詞への理解に対する検証内容を踏まえ、本科研費プロジェクトで実施した動詞の用法に対する習得と効果的な明示的文法指導について総合的に考察する予定である。教室環境における英文法指導にて、学習者が動詞の用法を正しく理解し、誤りを減らすことができるような指導法の内容と方法を具体的に提示したい。
|