研究課題/領域番号 |
20K13147
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
三上 仁志 中部大学, 人文学部, 准教授 (90770008)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 外国語不安 / 読解不安 / テスト不安 / 促進的不安 / ポジディブ心理学 / 外国語学習 / 不安 / 読解 / ポジティブ心理学 / 外国語教育 |
研究開始時の研究の概要 |
テスト場面で注意力を向上させ,学習行動を促す不安感情は,促進的不安と呼ばれる。言語教育領域における本概念の提唱は,40年以上前にさかのぼる。しかし,言語不安に関しては,これまで抑制的な負の側面が研究され,その促進的な性質は,検証されてこなかった。促進的不安の性質を明らかとすることは,言語運用や学習における不安の役割をより包括的に理解することにつながる。以上の理由から,本研究は,外国語読解における促進的不安の性質(=その構成概念と言語運用や学習における役割)を検証することとした。
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研究実績の概要 |
2023年度の研究実績は、口頭発表1件、論文1本である。以下に、これらの業績の基となった研究・調査の概要について述べる。第一に、外国語読解において促進的不安と妨害的不安が別の構成概念である可能性について検討した。促進的不安とは読解パフォーマンスや学習を高める種類の不安であり、妨害的不安とは読解パフォーマンスや学習を阻害する種類の不安である。外国語教育の分野においては、これらの不安概念が、単一の構成概念の両端であると考えられることが多かった(例えば、「多少の不安はパフォーマンスを上げ、強い不安はパフォーマンスを下げる」と考えられることが多かった)。このような理由から、不安の妨害的な性質に関する議論は多く行われ、その緩和に関する方法も多く議論されてきたが、促進的不安の性質に関する議論は、数が少ない状況であった。一方で、近年の研究の結果は、不安の発生には様々な要因が関係し、強い不安が一概に妨害的性質を持つとは言えないことを示していた。 このような理由から、促進的不安と妨害的不安の関係性について再考し、これらの不安概念が単一の構成概念の両端であるか否かについて検証を行った。この検討を行うため、2021年に104名の大学生を対象とし、データの収集と分析を行なった。詳細は「現在までの進捗状況」に譲るが、データ分析の結果は、既存の尺度を使用して外国語読解における促進的不安の性質を明らかとすることには限界がある、という可能性を示した。 この結果を受け、2022年に外国語読解における促進的不安の測定尺度の開発に着手した。現在は、106名の対象者から得たデータの分析を開始し、尺度のパイロット版の完成を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」で述べた104名の大学生を対象とした調査は、2020年に実施する予定であった。しかし、コロナ禍の影響により、データ分析に必要な英語の読解テストの実施が困難となり、調査を2021年に行うこととなった。2021年の調査では、質問紙調査と英語読解テストを実施し、促進的不安と妨害的不安の関係性を検証するために必要なデータを収集した。収集したデータを使用し、既存の促進的不安尺度の得点と①外国語読解不安および②外国語読解と関係するポジティブな心的特性(例:自己効力感)の関係性について分析を行った。結果として、促進的不安の振る舞いがポジティブな心的特性のそれと類似し、妨害的不安の振る舞いとは異なることが確認された。この研究成果は、国際学会Association for Reading and Writing in Asiaの2021年次大会で発表された(口頭発表)。 これに加え、上記の104名のテストデータを使用し、既存の促進的不安尺度の得点と外国語読解テストの間には一定の関係があるものの、それは、外国語読解に特化した心理尺度とテスト間の関係と比べて弱いものであることを確認した。これらの結果から、外国語読解における促進的不安の性質を明らかとするためは、新たな尺度の開発が必要であるという結論を得た。この研究成果は、国際誌Reading in a Foreign Languageの35号に掲載された(発表は、2023年4月となった)。 以上が、現在までの進捗状況である。業績の数は当初予定を上回っているものの、促進的不安尺度の開発は完了しておらず、当初の予定に遅れが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
以下に、今後の研究の推進方策を記す。「現在までの進捗状況」でも述べたとおり、コロナ禍の影響により、全体の研究計画の進捗は遅れている。本報告書を作成している時点では、促進的不安の測定尺度のパイロット版を作成する上で必要なデータが揃っている状況である(i.e., 「研究実績の概要」に記載の106名を対象とした調査のデータ)。第一に、2023年の夏までを目処に、このデータを分析可能な状態に整形し、データ分析を行い、パイロット版尺度の完成を目指す。また、ここでパイロット版尺度が完成しなかった場合は使用する質問項目について再検討し、追加調査を行う。追加調査を行う必要が生じた場合、2023年の年末までに再調査を行い、パイロット版尺度を完成させる。 パイロット版尺度が完成した時点で、開発した尺度の妥当性を検証するための調査を行う。ここでは、再検査妥当性、基準関連妥当性、および収束的・弁別的妥当性の検討を行う。再検査妥当性については、新たなサンプルから得たデータを使用してパイロット版尺度の因子構造が再現されるかについて、検証的因子分析を使用して検証する。基準関連妥当性については、促進的不安尺度の得点が英語の読解テストの成績の分散をどの程度予測するかを確認することで検証する。収束的・弁別的妥当性については、促進的不安尺度の得点が、外国語読解と関係するポジティブな心理特性や妨害的不安尺度の得点とどのように関係するかを確認することで検証する。最終的には、2023年度が終了する前にこれらの妥当性検証を行うことで、研究計画を完了する予定である。
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