研究課題/領域番号 |
20K13166
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
前田 亮介 北海道大学, 法学研究科, 准教授 (00735748)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 日本政治外交史 / 国際関係史 / 暴力と通貨 / 帝国 / 脱植民地化 / 国際金融 / 占領地 / 学知 / 植民地銀行 |
研究開始時の研究の概要 |
近代国家の特質の一つは、一定の均質な領域内における暴力と通貨発行の独占にある。後発近代化をめざした日本も、廃藩置県、紛争終結、さらに本位貨幣の創出により、幕藩制国家から西欧型の領域主権国民国家に再編された。ただ、こうした「一国家・一通貨」の組み合わせは洋の東西を問わず近代の例外的現象であり、通貨や金融が帯びる越境性を近代国家はときに勢力拡大に利用し、またときに統御に失敗して国内の不安定化を招いてきた。本研究はかかる観点から、戦間期日本の対外膨張政策を朝鮮銀行や満洲中央銀行といった植民地/占領地銀行の視点から再検討し、政軍関係から理解されてきた帝国の拡大メカニズムに新たな光をあてることをめざす。
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研究実績の概要 |
研究期間の第3年度目となる本年度の最も大きな成果は、収集してきた国内外の一次史料の分析に基づき、「満洲国」の建国から日中戦争の長期化にいたるまでの東アジアの金融と外交の関係を検討した約9万字の論文を執筆したこと、またこれに基づく学会報告を行ったことである。この論文「対外膨張過程における帝国金融秩序の再設計――銀行家・軍・イギリス」では、①満洲国の存在を与件としつつも朝鮮銀行と対立する、高橋是清や星野直樹ら大蔵省・正金・満洲中央銀行グループの満洲国国際化構想、そして②関東軍と一定の緊張感に立った磯谷廉介(上海)や天津軍といった陸軍出先の華北国際化構想を、それぞれに呼応する可能性をもった英大蔵省―イングランド銀行―香港上海銀行、英連邦のラウンド・テーブルグループ、英仏の外務省、中国の孔祥熙や陳光甫の動向と重ね合わせることで、日英両帝国の中国をめぐる再均衡が失われていく過程に新たな光をあてた。とくに従来大きな論争のある、日英関係の協調可能性の有無の議論を架橋する視点を提示したことに、研究史上の貢献を見出しうる。本校は形式上は未定稿だが、すでに日本国際政治学会のウェブサイトで大会前後広く回覧されており、当日も討論者およびフロアからきわめて有意義な批判と建設的提言をいただくことができた。分量が膨大にわたるため、今後、既執筆部分の大幅なブラッシュアップと、課題として残された部分の調査・加筆を通じて単著にまとめたいと考えている。次に前年度に引き続き、学知・学説史という観点から本研究の発展に資する成果を発表した。具体的には、福沢諭吉、丸山眞男、遠山茂樹、信夫清三郎、江口朴郎といった人々の外交や国際政治経済へのアプローチについて、いくつかの報告や論文入稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単著の原型となる大部の論文を一応脱稿し、学会報告を行ったことで、占領地・植民地銀行が戦前日本の対外膨張過程でどのような役割を果たしたかという本研究計画の主題について今後公刊していく具体的な見通しがついたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は学会報告の準備に集中したため、史料調査を十分進めることができず、しかも論文の脱稿の過程で、蒋介石政権における対外経済政策、とくに通貨統一政策や外資導入政策についてより立ち入った考察を加える必要が新たに生じた。また、日本の国策会社や軍出先の動向についても、私文書をはじめ未検討のものが少なくないことが明らかになった。そのため、当初の予定を1年延期し、最終年度となる4年度目に国内外での史料調査をあらためて実施し、この残された課題を推進することで、研究の完成をめざすことにしたい。
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