研究課題/領域番号 |
20K13200
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 大阪大学 (2023) 京都大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
秋田 朝美 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 招へい研究員 (40793691)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 借款 / 国民政府 / アメリカ / 経済援助 / 桐油 / 棉花 / 1930年代 / 棉麦借款 / 中米関係 / 桐油借款 / 救済 / 経済建設 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、1930年代のアメリカから中国への対物借款が国民政府の経済建設に果たした役割を解明する。特に、1933年の棉麦借款から1939年の桐油借款への連続性に着目し、桐油借款の実施に至る経緯と国民政府およびアメリカ政府の思惑、また、借款締結後の中国経済への具合的な影響を明らかにする。従来、戦間期と戦時期に分けて検討されてきた対物借款の歴史を連続的に分析することで、国民政府の経済政策、およびアメリカの対中経済援助の包括的な理解へとつなげていくことを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、1930年代のアメリカが国民政府に供与した対物借款である1933年の棉麦借款と1938年の2500万ドル借款(桐油借款)を通じて、ワシントン体制下の東アジア国際秩序の変質過程を政治・経済・外交面から実証的に再検討する。本研究の特徴は、政治・外交問題を経済的な側面から考察することで経済史、外交史、政治史という従来の区分を超える学術的研究を目指している。 既存の棉麦借款の研究では、1937年7月7日の盧溝橋事件の勃発により、1935年の棉麦借款の終了宣言までの戦間期のみで検討されてきた。だが、本研究では、戦時期にわたって分析することで、棉麦借款と1938年に締結された2500万ドル借款とのつながりを解明している。その論拠となるのは、南京国民政府の蒋汪合作政権が1938年末まで継続していたこと、さらに日中戦争勃発後も重慶国民政府は、救済・援助を用いた借款交渉を模索していたことである。その裏付けは棉麦借款の残額分3000万ドルの利用にあった。重慶国民政府側の対米外交と、アメリカ政府内部で意図された対中外交の齟齬がどのように調整されたのか。中米間だけでなく、日本とドイツの動きにも注視して四国間の多国間関係のなかで中米双方の外交交渉の変容を明らかにした。 今年度は、2023年5月に開催された「中国現代史研究会」の東海地区5月例会、および京都大学経済学研究科で開催された「史的分析セミナー」で報告し、より研究を具体化することにつながった。さらに報告の成果を『アジア経済』誌への投稿論文に反映させることができ、2024年6月号に掲載決定となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
アメリカと台湾の档案館における一次史料の閲覧と収集が必要である。本研究の課題をまとめるには、米中間の借款に関連した通商問題だけでなく、第3国側、特に、日本とアメリカ、日本と台湾・香港を通じた通商問題とその影響についての多面的な分析が十分できていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究に関連して、本研究の課題を含む単著の出版にむけた作業も同時にすすめていきたい。その単著は、1930年代の中国がアメリカから供与された対物借款の影響を受けて展開した対外的な政治・外交・経済的な多面的な活動の考察を通じて、アメリカが国民政府に供与した対物借款による救済・援助の特徴を俯瞰することになる。 そこで、今後の研究では、アメリカの対物借款に関連する第3国の影響にも注視していきたい。この対物借款は、商品(棉花、小麦、小麦粉、桐油)の移動を伴う借款であるため、日本の通商面にも影響を与えていた。特に、日本は、アメリカの対中借款の供与に関心を抱き、間接的にアメリカをけん制する動きも行っていた。代表者もこうした日本側の動向についてすでに検討してきたが、その検討がまだ不十分である。そのため、日本は、間接的に入手した対物借款に関する情報をどのように利用し、その後の動きに影響を及ぼしたのか、日本の植民地側の視点も含めて通商面から再検討する。こうした研究の成果は、学術雑誌の『日本植民地研究』に再投稿する。 また、戦時期の後半における中・米・日の動向についても考察し、時間軸をさらに延長して、次の科研申請に向けた計画も検討する。
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