研究課題/領域番号 |
20K13208
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 仙台高等専門学校 (2021-2023) 中部大学 (2020) |
研究代表者 |
朱 琳 仙台高等専門学校, 総合工学科, 助教 (50815925)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 中国現代文学 / 近代化論 / パール・バック / 岡崎俊夫 / 竹内好 / 鶴見和子 / 戦後知識人の民衆観 / 中国近代文学の受容 / 丁玲 / 趙樹理 / 武田泰淳 / 松枝茂夫 / 翻訳 / 脈絡転換 / 文化触変論 / 中国文学研究会 / 近代日本の中国文学受容史 / 中国認識 / 近代中国文学受容史 |
研究開始時の研究の概要 |
「中国文学研究会(1934-1958)」は、戦前から戦後にかけてほぼ継続して同時代の中国文化に注目した学術団体である。本研究は、この中国文学研究会を介して、戦争を境として発生した日本における「中国認識の分裂」という現象に注目し、民間知識人の中国認識の潮流がどのような分裂・変容を見せたのか。その動態をこれまでにない詳細なレベルで分析したい。またその目的達成のため、明確化の障壁となっていた狭い領域での拘泥を排除し、近年公開された資料から浮かび上がった新たな動向を積極的に取り入れ、多角的・実証的に解析したい。
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研究実績の概要 |
2023年度は①文学評論から読み取れた岡崎俊夫の中国認識、②竹内好の戦後中国論の影響について検討した。 ①について、岡崎俊夫の著作集、また前年度の資料調査によって収集された翻訳作の「あとがき」、『近代文学』・『新中国』・『新日本文学』などの雑誌に発表された中国近代文学に関する評論文を精読し、近代中国文学を通して形成された岡崎俊夫の中国観を検討した。先行研究では、岡崎俊夫は政治や社会問題から距離を置き、人間の内面世界を重視する人物として位置付けられたが、岡崎の著作を網羅的に検討することによって、彼が戦後中国の政治的・社会的な実像に強い関心を持ち、むしろ文学を通して、中国の社会問題にアプローチしようとした姿勢が確認された。 ②について、竹内好の戦後中国論の影響を明らかにするために、同時期の社会学者・鶴見和子の近代化論の形成と照らし合わせて検討を試みた。従来の研究では、竹内好の近代論をつねに丸山眞男と結びつきながら検討されてきたが、本研究では、竹内の文学を通して、中国の社会問題を考える姿勢は、鶴見和子の内発的発展論の形成にも読み取れることが確認できた。今までは竹内の戦後中国論は戦争に対する反省と思考として、鶴見和子の内発的発展論は社会学の理論として別々に取り扱われてきたが、本研究は、戦後思想の形成と発展において、中国文学は他者/参照物/媒介として、異なる分野を繋ぐ役割を果たしたと同時に、日本の主体性に関する思考を刺激したことを検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
勤務校で校務の増大によって、研究時間が圧迫されたうえ、一時的に体調が崩れたため、予定された学会発表の取り下げを余儀なくされた。このように、研究に充てられる時間が限られたため、論文の執筆が順調ではなかった。予定されている課題が山積みしているが、文献の精読と検討が絶えずに行われてきたため、次年度に成果として発表できる場を確保し、残された課題を整理していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策について以下の通りである。 第一に、戦後竹内好の近代論と中国認識、および鶴見和子の内発的発展論の形成との関連性について、昨年コロナ罹患で発表できなかった成果であるが、さらに整理して完成度を高め、学会で研究成果を発表する。 第二に、岡崎俊夫の中国認識に関する成果を論文化して発表する。 第三に、昨年実施できなかった実藤恵秀に関する資料調査を行い、戦後国語教育と国語改革の認識とその中国観との関係を探究する。
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