研究課題/領域番号 |
20K13226
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
中嶋 耕大 関西外国語大学, 外国語学部, 助教 (90844712)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 西欧中世史 / イベリア半島 / カタルーニャ / 君主代官 / veguer / 都市 / 君主権力 / 地方行政 / 君主代官と都市 / 君主権力と政治形態 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、中世カタルーニャの諸都市に存在した君主代官について、13・14世紀を対象期間として考察をおこない、それを通して、君主とその所領内の都市との関係を明らかにする。特に、この役人をめぐり君主と都市はどのような関係を構築していったのか、そして、その関係が、君主が企図した権力強化にどのような影響を及ぼしたのか、という点を検討する。本研究は、中世カタルーニャの地方行政において、君主による権力強化策がどのように展開され、それにより、いかなる結果が生じたのか、という問題への取り組みの第一段階を構成している。究極的には、中近世国家の政治形態の全容解明につながる研究である。
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研究実績の概要 |
本年度も、重点的に検討する問題(13・14世紀のカタルーニャにおいて、君主代官をめぐって君主と都市はどのような関係を構築していったのか、そして、その関係が君主が企図した権力強化にどのような影響を及ぼしたのか)に取り組む第一段階として、史料の調査・分析をおこなった。しかしながら、7月に通勤中のバス事故で負傷したため、夏期に予定していた調査については断念した。これに伴い、調査方法とその成果報告については、「研究実施計画」の部分的な見直しを余儀なくされた。具体的には、2024年3月に現地調査を実施し、その他の時期には、文書館の史料目録を活用して、現地調査の際に複写・分析すべき古文書を選定し、並行して本研究課題に関連する先行研究を精読した。その結果、得られた知見は以下のとおりである。 13世紀末にバルセロナの司法官を務めたルメウ・ダ・マリモンは、百人会議(バルセロナ市当局の一機関)の成員である一方で、君主の統治機構の要職を歴任するなど多岐にわたる分野で君主に仕えた人物であった。彼がバルセロナの司法官として活動した期間は、君主代官の監察制度が徐々に整備されていったのに加えて、1292年には君主が買官者の解任を余儀なくされるなど、定説では、君主代官に対する等族とくに都市当局による統制が強化され始めたとされる時期に相当する。しかしながら、彼は、バルセロナの司法官への選任を買官だとみなした市当局から一度は着任を拒否されつつも(1288年)、最終的には1291年に承諾され、1299年まで活動している。以上のことから、この人物の事例は、法制史的な観点のみでは理解しきれないものであり、その詳細な分析が君主代官をめぐる君主とバルセロナ市の関係解明につながると考えられる。今後は、この司法官の活動や諸関係を詳らかにするため、バルセロナ市のみならず、君主側が遺した古文書も調査・解読していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題の進捗状況については、大変残念ながら、「遅れている」と判断せざるをえない。 主として、以下に挙げる2つの事柄が、当初の計画の実現を阻んだためである。 第一に、新型コロナウイルスの世界規模での感染拡大により、補助事業期間の開始時(2020年4月)から2023年3月に至るまでの約3年間にわたって現地調査をおこなうことができなかった。それにより生じた史料調査および分析の遅れを取り戻すことができていない。 第二に、2023年7月に出勤するため乗車していた路線バスが交通事故をおこし、海外渡航に支障をきたす怪我を負った(左足首などの負傷)ため、夏期(8月末から9月初頭)に予定していたスペインへの渡航については断念せざるをえなくなった。このことにより、現地の文書館・大学図書館などで史料(一次史料および二次文献)の調査・複写をおこなうことができなくなり、史料の調査・分析が一層遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
主として2020年度・2021年度に、当初計画していた現地での史料調査が実施できず、研究計画の大幅な見直しを余儀なくされたことにより、本研究課題の進捗は遅れている状況である。そのため、対応策として、考察対象とする都市については、目録をはじめとして、史料の整理・分類が比較的充実しているバルセロナ市に限定し、なかでも13世紀末のルメウ・ダ・マリモンという司法官の事例を分析することに注力する予定である。さらに、その分析結果をもとに、13世紀末のカタルーニャにおいて、君主代官をめぐって君主とバルセロナ市はどのような関係を構築していったのかという問題について検討し、仮説を所属学会などで発表したい。
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