研究課題/領域番号 |
20K13246
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03060:文化財科学関連
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
松原 亜実 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 専門研究員 (20808232)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 藍 / ジャパンブルー / インディゴ / 顔料 / 染料 / 天然染料 / インジゴ / 抽出 / 科学調査 / 伝統技法 / JAPANBLUE / 古典技法 |
研究開始時の研究の概要 |
世界で古くから普及していた藍色の代名詞が“Japan blue”となったのは、江戸時代~明治時代に日本を飾った藍の発色が美しかったからに他ならない。しかし、現在の日本人がイメージする“Japan blue”は18世紀前半に日本へ伝えられたプルシアンブルーであり、本来の藍から置き換わっている。伝統的な藍染めは現代に至るまで継承されているが、ベロ藍が日本の代名詞的なカラーイメージとなったのは、葛飾北斎をはじめとする浮世絵の影響が大きい。 染物よりも絵画が与える色のイメージがより強いことを踏まえ、本研究では江戸時代の人々を魅了した美しい発色の顔料化した藍を蘇らせ、絵画を通じた本来あるべき“Japan Blue”の再現を目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究では、江戸時代のさまざまな文献に概略のみ残されている記載内容から具体的な手順を再構築し、透明度が高く発色も優れている藍の顔料を製造する。そして、江戸時代の人々を魅了した美しい顔料化した藍を蘇らせ、より強く鮮明なカラーイメージを伝えられる古典絵画の復元へ貢献することを目的とする。 2023年度は主に沈殿藍(沈殿抽出)作製試験を中心に行った。沈殿藍とは藍の生葉を水につけ、インジカンを抽出した液を攪拌し空気に触れることで酸化させ、インディゴ色素を沈殿集積する方法である。インディゴ成分は、藍の茎や根にはなく葉のみにあるとされている。そのため刈り取った藍の生葉のみを採集し使用した。実験内容①蓼藍(生葉)3.0kg ・水30リットル・石灰 30g(ph10の値)②蓼藍(生葉)3.0kg ・水30リットル・石灰 50g(ph11の値)③蓼藍(生葉)4.0kg ・水40リットル・石灰 70g(ph11の値) 藍の生葉を水に入れ静置しおよそ2日間置く。藍の葉に滑りが出てきたところで葉を捨て石灰を加え抽出液の攪拌を行う。その後さらに2日間静置しインディゴ色素を沈殿させる。 検証結果 ①②③いずれの試験結果でも沈殿に成功した。①でも沈殿が見られたが②の石灰量を増やした方がより沈殿が早く量も多く集積した。②と③では仕込む量を変え、集積するインディゴ色素のあたりの数値の差異をみた。これより仕込む量と沈殿量がわずかではあるが比例することが確認できた。石灰の量を増やすことで集積は容易となる一方、乾燥後のインディゴ色素より多量の石灰が残った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は藍が色材に用いられている江戸絵画の科学調査を行う予定であったが、COVID-19の影響で大学美術館を含む他美術館での調査が延期となった。抽出試験の実施の予定もずれ込んだため「やや遅れている」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は藍華の顔料抽出の生成方法を検討し、より純度の高い抽出意見を実施する。沈殿藍の組成や技法の置き換え再現試験を行い、より質の高い藍の抽出を試みる。また集積した沈殿藍を濾過し、顔料としての最適化を試みる。 同時に藍を用いて江戸時代に描かれた肉筆画(紙本・絹本に描かれた絵画)、及び浮世絵版画の色材調査を行う。藍は褪色が起こるため、作品調査は藍が認識できる江戸時代の作品に限定する。調査手法は非破壊で調査が可能なマイクロスコープによる粒子観察、蛍光エックス線分析装置による元素分析、近赤外可視光反射スペクトル分析、FTIR分析を行う。
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