研究課題/領域番号 |
20K13251
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03060:文化財科学関連
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
金 旻貞 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (60755784)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 和紙 / 装こう文化財 / 収着 / 装コウ文化財 / 伸縮 / 膨潤収縮挙動 / 装コウ文化財の修理 |
研究開始時の研究の概要 |
書画文化財には紙の上に墨や絵具を用いて描かれた絵画、書跡、歴史資料等があげられる。これらは掛軸や巻子等のように装丁を含めた全体としての構造や素材が相互に影響しながら今日まで保たれてきた。本研究では吸湿と乾燥が繰り返させる修理工程において、修理現場でこれまでに懸念されていた本紙の膨潤収縮挙動に着目した。乾燥中に寸法変化が起こる原因を和紙(または単繊維)の種類によるのか、もしくは経年変化による繊維の変質によるものなのかを明らかにし、従来の単繊維の伸縮の研究からシート状(全体像)の膨潤収縮挙動を把握するという新しい試みである。終極的には和紙の膨潤収縮挙動を制御し、正確な修理施工に繋がると考えられる。
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研究実績の概要 |
装こう技術を用いた書画文化財修理の中で、水は欠かせない材料の一つである。修理に携わる技術者は、料紙の材料の特性、すなわち原料、製造方法や加工方法の時代性、紙の触感、使用実績からの安全性等、多岐にわたる要素を総合的に理解し、その技術的経験をもとに水による料紙の伸び縮みといった形状変形をコントロールしながら修理作業を進めている。しかしながら、修理作業の難易度は、対象となる作品に用いられている紙質の特性ごとに大きく異なる。 本研究では、より安全で安定した修理作業の実現のために、手漉き和紙のシートについて科学的分析を行なう。各手漉き和紙の吸水率が異なるところに着目し、水の収着メカニズムを検証する。また装丁という多層構造にした場合、これまでの伝統的な作業についてどのように工夫されているのかを科学的に裏付けすると共に、シートの伸び縮みといった形状変形を抑制する方法を設定する。 1.装丁における和紙の使用事例について先行研究及び修理報告書を調査した。装こう文化財が他分野の文化財と大きく異なるのは、作品(本紙)に装丁部分が加わって形を成していることである。装こう文化財の形態は大きく3種類(軸装・幀装・帖装)あり、其々の形態に合った和紙を選択し修理が行われている。和紙は各産地によって持ち味ともいえる紙質の特徴があり、それを生かして修理に使われていることから、修理報告書の調査では選択した和紙の種類と装丁の形態との関連性について重要視した。また和紙工房を訪問し、原料や製造方法などの聞き取り調査を行った。このように資料と材料を集め、データベースの構築を行っている。 2.紙質の評価については、各紙の基礎的な性質を、坪量、繊維観察、厚さ、密度などはJIS法に準じて行った。 3.収着等温線に関する実験については、実験データから再現性が取れず実験環境の改善が必要であることが確認できた。再検証を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一部の試験場の使用が出来なかったため大幅に遅れている。ただし、和紙のデータベースは計画通りに進めており、十分な成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
研究遂行の評価指標を再検討する予定である。料紙の物性試験では基礎的なデータを加える予定である。キーワードで定義すると、強靭さの評価、pH値、ぬれ性(接触角)、ろ水度の評価である。 なお、和紙の材料特性のデータベースについては、昨年度に続き、資料例を増やし汎用データベース構築していく。
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