研究課題/領域番号 |
20K13281
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
齋藤 恵美 奈良女子大学, 全学共通, 特任助教 (60791796)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 熊野信仰 / 常世信仰 / 山岳信仰 / 世界観 / 境界性 / 外部性 / 開発 / 神社鎮座地 / 空間配置 |
研究開始時の研究の概要 |
近現代は諸現象を科学的に把握するが、それ以前において人々の自身を取り巻く現象に対する認識はどのような世界観の上に成っていたのか。熊野信仰は発生や歴史的展開から、世界観と密接に関連する境界性が強く意識された信仰である可能性が極めて高い。その変遷を辿ることで、上記の問いの一端を明らかにする。方法として、現在四千社以上あるとされる熊野信仰系神社の性格(位置・勧請の時期・祭神・縁起など)を整理し、位置を成立時期毎に分けて地図上にポイントし、そこに主要聖地や山・川、各時代の道などを重ねた地図を作成する。本研究はこのような軸を通すことで、熊野信仰の時間推移と空間配置の関係を明確に可視化することを目指す。
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研究実績の概要 |
人は生存のために社会を形成する。神々をまつる神社は、社会の内部の関係性をあらわす媒体、あるいは外部と関わり社会のありかたを規定する媒体として、その社会を象徴する機能を持つ。つまり神社は、人々が内部と外部を物理的・心理的にどのように捉えてきたのかという、ものの見方や認識としての世界観をあらわす装置といえる。 熊野信仰は発生や歴史的展開から、境界性を反映した外部性の強い信仰であることが分かっている。熊野信仰系神社は各地に勧請され全国に分布しているが、人々はこの神社を空間のどこに配置したのか、また時代によってその傾向に差異があるのかを検討することで、人々が実際に外部というものをどのように認識し関わってきたのか、またそこに変化があるのかをみていく。そのため、熊野信仰系神社の性格(位置・勧請の時期・祭神・縁起など)を整理し、その所在地を整理したデータから古代~近代までの勧請された時代別に地図に落とし、熊野信仰の時間推移と空間配置の関係を明確に可視化するという作業を行っている。 令和四年度は、昨年度まで行っていた全国熊野信仰の分布地図作成作業を一旦保留し、人々の認識についての観念的な考察を行なった。方法として、境界性や外部性への認識に大きくかかわると考えられる開発について、仏教的な側面からのアプローチを試みた。具体的には八世紀の行基による架橋築堤道の造設などの土木事業の意味や、聖武天皇とタッグを組んだ廬舎那仏造立についての考察を行ない、それらが人々の自覚できる通常の認識を超えた、人・物・環境などの間に関係が存在するという認識をもたらしたのではないかとの仮説を立てた。そしてそれは、外部というもの(通常の認識を超えたもの)がどのように認識されたのか、またそこに変化があったのかという問いへの一つ手がかりだと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和四年度に大学の附置機関として新たな研究所が立ち上げられたのだが、その創立・運営に携わる業務・研究のため、令和三年度に予定していた当課題の研究計画がほぼ履行できなかったことによる。
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今後の研究の推進方策 |
令和五年度も引き続き令和四年度からの新たな業務のため、当課題に対するエフォート確保が難しい状況にある。そのため、当課題はデータ整理に多くの時間を要することから、当初の計画であった全国の熊野信仰系神社のデータ整理とそれを可視化する地図作成の完成が、現状では不可能だと判断する。以上の理由から、取り扱う範囲を、全国ではなく東日本(北海道・東北・関東・北陸・中部・滋賀県)に限定し、そのデータ整理と地図作成を完成するよう研究計画を変更する。 令和五年度は、令和四年度までに作成した地域のデータの見直しと、残りの地域のデータ整理・地図作成を行なう。
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