研究課題/領域番号 |
20K13286
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 静岡文化芸術大学 (2023) 麗澤大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
内尾 太一 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 准教授 (30759569)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 津波災害 / 復興 / 尊厳 / 生態系 / 持続可能性 / 環太平洋 / 震災復興 / 養殖漁業 / 水産エコラベル / マルチスピーシーズ / 文化人類学 / モノを通して考える / 東日本大震災 |
研究開始時の研究の概要 |
東日本大震災の発生から9年以上が経過した。その被災地は、国家や市場、市民社会の参入による復興を通じて、短期間のうちに文化変容を経験してきた。その変化に被災者はどのように向き合ってきたのか。そこでキーワードとなるのが、被災者の尊厳(dignity)である。 本研究では、今日に至る復興過程における被災者の尊厳の現れを重要な現象として捉え、その発現メカニズムの解明を主要課題とする。従来は人間に内在する本質的かつ静的な概念とみなされてきた尊厳を、文化人類学の手法によって地域社会に備わる価値をめぐる防衛機制として描き出し、人間の社会に散在する動的な関係性の概念へと再構築を試みる。
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研究実績の概要 |
22年度の主たる研究成果である内尾(2023)「持続可能な養殖漁業の継続要因に関する人類学的探求 一宮城県南三陸町におけるカキ養殖のASC認証取得を事例に一」『環太平洋文明研究 7号』を基に、6月3日、4日に県立広島大学で開催された日本文化人類学会第57回研究大会において、以下の研究報告を行った。 内尾太一(2023, 6)「持続可能な養殖漁業と国際エコラベルに関する文化人類学的考察:宮城県南三陸町の復興過程を通じて」 また夏季休暇中に、震災復興過程で重要な役割を果たしたカキやワカメといった日本の在来種が、3.11の津波で流出した瓦礫に付着したまま北米の太平洋沿岸部に漂着した現象に注目し、オレゴン州で現地調査を実施した。その経験に基づき、以下の論文が2024年3月に出版された。 Uchio, Taichi(2024)Bicoastal Resonances: Toward a Cultural Anthropology on JTMD, Debris Hitchhikers, and the Extended Effects of 3.11, 『環太平洋文明研究 第8号』 ここまでの一連の研究を通じて、災害後に東北沿岸部の人々が自然や生態系とともに復興を遂げていく過程を明らかにしつつ、津波の環太平洋への影響や対岸の反応を取り入れたことで、地域文化に固有の価値観や営み(本研究ではそれらを現代における尊厳概念と密接に関わるものと捉えている)を、より多角的に観察及び描出できる枠組みを提示することができた。 また、2023年11月には本研究課題の調査地で開催された第二回南三陸いのちめぐるまち学会大会で、以下の招待報告を行った。 内尾太一(2023, 11)「南三陸町の文化人類学:ここから深くへ、ここから遠くへ」
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災の被災地における尊厳の発現メカニズムを解明する本研究において、ここまで復興過程における地域の自然や文化の重要性が具体的に明らかとなってきた。また23年度は、対岸からその状況を捉える視座が導出されたことで、調査地の文脈をより意義深く考察することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
延長した最終年度では、環太平洋の視点も含めて、調査地の事例研究をより広い文脈から解釈していくことを試みる。南三陸町では、ASC認証(養殖漁業のエコラベル国際認証)の取得(内尾 2023)だけでなく、FSC認証(林業のエコラベル国際認証)の取得や、養殖漁業が行われる志津川湾がラムサール条約登録湿地になっていることにも注目し、ローカルな実践とグローバルな価値基準がどのように、地域の誇りとして結実しているのかを明らかにしていく。
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