研究課題/領域番号 |
20K13290
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
藤川 美代子 南山大学, 人文学部, 准教授 (10749550)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 文化人類学 / 海藻 / 海洋資源 / アジア / 石花菜 / テングサ / 海女 / 台湾 / 日本 / 海洋生物 / 収奪 / ドメスティケーション / 人類学 |
研究開始時の研究の概要 |
人は海という空間をいかに飼い馴らしてきたのか。本研究は、①海の動植物に対するドメスティケーション(栽培化・養殖化)、②海という空間の制御(自然災害予防)、③海に生きる人々の統治(国家防衛・国境管理・海洋保護)にかかわる管理システムの総体を「海を飼い馴らす技術」と名づけ、それらが自然状態としての海に含有される不確実性の克服手段として精緻化されるプロセスを追うことで、海に生きる人々が経験した近代化の一端を捉えることを目指す。具体的には、魚類・貝類・海藻類の捕獲/養殖において異なる依存の程度を見せるA)中国の船上生活者、B)台湾の海女、C)フィリピンの海藻養殖者の三者に注目する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、特に海藻の採集・加工・流通・消費に関する知見を広めるべくフィールドワークと資料調査を実施することに注力した。 1)台湾では、「洋菜」と呼ばれるオゴノリ由来の工業寒天の製造・流通について理解することに努めた。洋菜メーカーの創業者などへの聞き取りから、台湾では日本統治期に日本人がテングサを使用した寒天工場を経営し、戦後になって台南でその技術が引き継がれたものの、テングサ資源の枯渇と価格高騰により、1970年代までにはオゴノリを使用した寒天へと転じたこと、2000年代初頭には工業廃水の環境問題化により工場の海外移転が進んだことなどがわかってきた。聞き取りで得られた断片的な情報を、系統的に記述し、分析するために、さらなる情報の把握に邁進したい。 2)一方の日本では、天然・養殖ワカメの一次的な加工の地域的バリエーションを把握することに努めたほか、テングサやオゴノリに由来する寒天の最終的な加工品である羊羹の製造工程では、いかなる性質をもった寒天が好まれるのかを知ることに着手した。前者に関しては、同じ天然のワカメでも、地域によって「ワカメが採れなくなる条件」に関する民俗的知識に大きな差があることが明らかになったほか、養殖ワカメの加工をめぐって隣り合う地域でまったく異なる方法がとられており、それに対する評価が地域で分かれるという興味深い事例に出あうことになった。 さらに、台湾での海藻文化に関わるこれまでの研究成果を台湾国立海洋科学技術博物館での講演により地元に還元することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本各地や台湾でのフィールドワークと資料調査を順調に進めることができた。研究の対象は、海洋生物資源のなかでも特に海藻に絞られつつあり、そのことで対象をより深く理解することができると考えている。また、2023年度は海藻採集の現場のみならず、海藻の加工や流通に関わる人々とその歴史を断片的ながらも把握することができた。
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今後の研究の推進方策 |
主な対象とする海洋生物資源を「海藻」に限定して、調査・研究を継続する。台湾の海藻の流通・加工過程について研究するなかで、中国大陸や東南アジア(フィリピン・インドネシアなど)における海藻の養殖・加工についての理解が不可欠であることがわかってきたため、可能な限り、それらの地域にもフィールドワークと資料調査の範囲を広げる努力をしたい。
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