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チリのマプーチェ先住民組織における民族医療に関する文化人類学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K13296
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分04030:文化人類学および民俗学関連
研究機関国立民族学博物館

研究代表者

工藤 由美  国立民族学博物館, 超域フィールド科学研究部, 外来研究員 (80634972)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
キーワードマプーチェ医療 / 先住民組織 / 患者 / パンデミック / 治療家 / チリ人患者 / 通文化医療 / 敬意(respeto) / 会合オンライン / 先住民文化教室オンライン / 共同性オンライン / 民族医療 / 先住民政策 / 医療の評価
研究開始時の研究の概要

南米チリでは1996年に始まった先住民保健特別プログラムの下、先住民マプーチェの民族医療であるマプーチェ医療が公的医療として実施されている。2012年以降、非先住民のチリ人患者が受診患者の8割を占め、それは「マプーチェ医療の成功」と捉えられている。他方、チリの建国以来その領土を奪われ続けてきたマプーチェの土地返還要求運動が2000年代以降過激化し、政府はその運動に反テロリスト法を適用、「マプーチェ=テロリスト、反社会的暴力集団」とする報道もあふれている。本研究は、マプーチェ医療の成功とは何であるのか、どういう意味を持つものであるのかを、医療的側面と社会的側面から明らかにしようとするものである。

研究実績の概要

本研究は、チリで1996年に始まった先住民保健特別プログラムによって提供されてきた民族医療(マプーチェ医療)の成功を、医療的側面と社会的側面から明らかにしようとするものである。マプーチェ医療の成功とは、非先住民のチリ人の受診者増加を指すが、開始当初の「受診者の7割は先住民」という規制が撤廃されて以降、チリ人患者数は7割程度で推移している。
今年度の実績は①学会発表:国内・海外各1点、②現地調査の実施の計3点である。①の国内の発表では、マプーチェ医療への関わりから見えるマプーチェとチリ人、チリ国家の3者の関係性について現地調査をもとに発表した。近年、新自由主義的多文化主義が注目される中、グローバルな資本主義の論理を逸脱せず国家に「許容された先住民」と、国家に「抵抗する先住民」という二分された活動が議論され、先住民医療は国家に貢献する前者とみさなれてきた。しかし、本発表では国家とマプーチェの関係は「許容」というより、認識のズレを表面化させない関係が維持されてきたことを示した。
国際学会では、過去15年間の患者の語りの変遷、なかでもチリ人患者のマプーチェ医療や文化に対する語り方に着目して分析を行い、マプーチェ医療を通して先住民と先住民文化に対する見方が変化してきたことを示した。加えて、海外の研究者らと意見交換の機会を持つことができた。
②現地調査は9月に約3週間、昨年とは異なる先住民組織で実施した。調査内容は、パンデミック後のマプーチェ医療の参与観察、医療従事者と患者へのインタビューである。また、チリ南部を訪問し、そこでマプーチェ医療を実施している治療家らへのインタビューも実施した。その結果、1)マプーチェ医療と公立診療所との連携、2)パンデミック時から現在までの患者の経験、3)南部でマプーチェ若年層の治療家が誕生している状況等が明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度は4年計画の本研究の最終年度であり、過去2年間コロナ禍により実施できなかった現地調査の2回目を実施することができた。当初の計画にあった調査対象の組織や地域を拡大して、新たな人脈は広がったものの、日程や現地の状況により調査に十分な時間を割くことはできなかった。パンデミック以降の調査ということで、日頃のマプーチェ医療に関連した内容のみならず、コロナ以降の現地の生活の変化、それに伴う患者の経験、先住民組織自体の変化などさまざまなレベルの変化の追跡も必要であった。今回も、調査の基盤となる部分に生じた劇的な変化を把握することに時間と労力を割かざるを得なかった。
現地調査を実施できたとはいえ、マプーチェ医療を実施する先住民組織や治療家らの中にはコロナ禍でほとんど活動できなかった人びともいたため、調査内容によっては十分な情報が得られなかった部分もある。この点では、次年度も引き続きオンラインで現地の関係者との情報交換を継続し、できる限り予定していた調査内容の実現が可能となるよう進めていこうと考えている。

今後の研究の推進方策

今後は、オンラインでの調査の継続と並行して収集した資料の整理を進め、より成果発表に重心を置いて進めていく予定である。
調査については、本研究の開始2年間はパンデミックにより、現地調査が実施できなかったことから、現地の人びととオンラインでの接触を通じて情報収集を続けてきた。研究期間を1年延長したことにより、その後の現地調査で知り得た新しい組織や人びととの交流も引き続きオンライン上で継続し、必要な情報収集を継続していく予定である。
それと並行してこれまでの調査で収集した一次資料と文献の整理を進め、学会発表や論文投稿等で成果を発表していく予定である。

報告書

(4件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] La medicina mapuche y la naturaleza: Diferencias en la utilizacion de recursos naturales entre el gobierno chileno, los pacientes chilenos y los mapuche2022

    • 著者名/発表者名
      工藤由美
    • 雑誌名

      ラテンアメリカ・カリブ研究

      巻: 29 ページ: 18-37

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 先住民医療の現場から見えるマプーチェとチリ人、チリ国家間関係2023

    • 著者名/発表者名
      工藤由美
    • 学会等名
      日本ラテンアメリカ学会・第44回定期大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Medicina mapuche y la evolucion de su vision entre los pacientes en estos quince anos2023

    • 著者名/発表者名
      Yumi Kudo
    • 学会等名
      XX Congreso de la Federacion Internacional de Estudios sobre America Latina y el Caribe (FIEALC)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] マプーチェのマプとは何だったのか?2022

    • 著者名/発表者名
      工藤由美
    • 学会等名
      第11回アンデス・アマゾン学会研究大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] マプーチェ医療の「成功」を支えるもの:チリ国家・マプーチェ関係についての考察2021

    • 著者名/発表者名
      工藤由美
    • 学会等名
      日本ラテンアメリカ学会西日本研究部会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [図書] ラテンアメリカ文化事典2021

    • 著者名/発表者名
      ラテンアメリカ文化事典編集委員会
    • 総ページ数
      780
    • 出版者
      丸善出版
    • ISBN
      9784621305850
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [図書] 医師・医学生のための人類学・社会学2021

    • 著者名/発表者名
      飯田 淳子、錦織 宏
    • 総ページ数
      288
    • 出版者
      ナカニシヤ出版
    • ISBN
      9784779515767
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書

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公開日: 2020-04-28   更新日: 2024-12-25  

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