研究課題/領域番号 |
20K13341
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05040:社会法学関連
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研究機関 | 九州国際大学 |
研究代表者 |
阿部 理香 九州国際大学, 法学部, 助教 (20829460)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 労働法 / 労働契約 / フランス / 健康 / 労働安全衛生法 / 労働安全衛生 / 職業性リスク / 予防 |
研究開始時の研究の概要 |
労働者の健康状態が悪化し十分に労働義務を履行できない場合、病気休職措置が講じられるのが一般である。しかし、精神疾患の特性上、時として、事前に病気休職の手続きを経ることができず、突発的に「労働を中断」させざるを得ないことが起こり得る。これまでの研究は、使用者の安全配慮義務等の事後的な救済に関する議論が中心であり、労働者が「労働の中断」をすることによって事前にかつ主体的に危険を回避するための理論研究は十分にはなされてこなかった。本研究は、緊急避難としての性格を有する「労働の中断」における当事者の権利義務の帰趨について、フランスの議論をもとに検討を行おうとするものである。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、労働者が自己の健康または安全を確保するために、解雇や懲戒の不利益を被ることなく、また、不就労に伴う賃金控除を受けることなく、自らの判断で労働義務を拒否することができるかという命題について、フランス労働法典上の権利である警告・退避権を素材に調査・検討するものである。労働関連リスク(通勤等を含む企業内外で生じるあらゆる危険)は、今日においては、災害性の事故に加え、精神疾患・障害、ハラスメント、自然災害、感染症の蔓延など多岐にわたる。とくに、日本における労働災害に対する救済は、労働者の傷病・死亡等を生じさせた原因が、業務上のものであるか否かが問題となるのに対し、本研究課題の対象である警告・退避権は、労働者の「生命または健康」に対し「重大かつ差し迫った」危険があるかどうかに着目されており、権利行使の原因となった危険が業務上の危険であるかどうかを必ずしも問題としない点が注目される。 2022年度に行ったこととしては、主には以下の2点がある。1つは、前年度に調査していたフランスにおけるCovid-19のワクチン接種義務をめぐる議論とその後の取り組みの展開等を継続して調査することである。Covid-19のパンデミックを理由に、出勤・就労を拒否することができるかという問題について、フランス政府は、インフルエンザ指針を改訂し、感染症によるパンデミックの状況があるというだけでは、退避権の行使を正当化することはできず、使用者が必要な感染対策を講じている限り、労働者は労務の遂行を拒否することはできないとされた。これらの研究成果の一部については発表の機会を得ることができた。また、もう1つは、警告・退避権における判例動向の分析を進めることである。2021年度に調査範囲を拡げ、分析する判例の数を増やした。2022年度は調査を継続するとともに、整理・分析および原稿執筆を進めた。2023年度の公表を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症のワクチン接種義務をめぐる議論について調査を進めることができ、報告の機会を得ることができたため。また、これらと警告・退避権との接続について研究が未だ不十分であり調査・検討を深める必要があるが、警告・退避権の論文公表に向け、研究会その他で他の研究者から助言を受けることができていることから概ね進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
フランスにおける警告・退避権について、2021年度までに調査した判例について動向を整理・分析し、研究成果を公表する。立法経緯についての調査をさらに深める。
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