研究課題/領域番号 |
20K13343
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
高橋 有紀 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (00732471)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 更生保護施設 / 更生保護 / 更生保護法 / 刑事政策 / 再犯防止推進計画 / 満期釈放者 / 地域包括ケア / 保護観察 / 精神科デイケア / 精神保健福祉 / 通所処遇 / 犯罪者処遇 |
研究開始時の研究の概要 |
更生保護施設における同施設退所者に対する処遇プログラムや相談支援といった通所処遇について、精神保健福祉分野での理論や実践を踏まえて検討することで、更生保護施設退所者の地域生活を支える通所処遇と地域社会の在り方を考察する。研究は、文献・資料調査と視察・ヒアリングによって行い、その経過を随時、刑事政策学および精神保健福祉学の学会等で発表し、最終年度に、その成果を論文ないし書籍として公表する。 また、本事業期間後には本研究を、更生保護施設退所者に限らない保護観察対象者や医療観察対象者の地域生活支援に資する枠組みの構築に関する刑事政策学と精神保健福祉学の研究者による共同研究へと発展させる。
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研究実績の概要 |
2022年度はコロナ禍の影響が続いており、日本国内の更生保護施設への視察・聞き取り調査は断念せざるを得なかったものの、2022年9月には英国にて調査をおこない、英国内の更生保護施設(probation hostel)や出所者等を受け入れる民間の宿泊型支援施設を視察し、日本国内の状況に関する文献調査に新たな示唆を得ることができた。また、2022年に刑法等の一部を改正する法律が成立し、2023年以降、本研究のテーマと密接にかかわる更生保護施設における通所・訪問型保護事業が開始されることとなったため、それらについて踏み込んだ調査・考察を続ける必要を見出し、期間を延長するに至った。 2023年度は、更生保護法、更生保護事業法の改正や、2023年3月に公表された第2次再犯防止推進計画を踏まえ、各地の更生保護施設における通所・訪問型保護事業や「特定補導」の実態について、文献調査及び聞き取り調査をおこなうことに注力し、法務省保護局にて聞き取り調査をおこなうとともに、旭川清和荘(旭川市)、敬和園(東京都中野区)にて視察・聞き取り調査を実施した。また、研究の成果について、日本刑法学会ワークショップ(理事会指名座長)、日本更生保護学会分科会(招待あり)にて発表した。それらを通し、「特定補導」や通所・訪問型保護事業に対する各更生保護施設の受け止めは多様であることや、その背景に社会福祉関係法規と更生保護関係法規の間のいわゆる「制度の狭間」が存在することが確認された。そのため、本研究の成果のまとめに際し、2023年12月の改正更生保護事業法施行後の状況についてさらに聞き取り調査等をおこなう必要があると考え、期間を再延長するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は当初2022年度末で終了する予定であったが、コロナ禍以前の状況を前提に2020年度中から更生保護施設での視察・聞き取りを多くおこなう予定を大幅に変更せざるを得なかったこと、2022年に更生保護法、更生保護事業法が改正され、2023年12月にこれら改正法が施行されたことに照らすと、結果論ではあるが、法改正の経過や法改正後の運用を踏まえた研究成果を公表することを新たな目標として研究計画を再編し、それに即して文献調査、聞き取り調査を進めることができている。また、2023年度中には本研究に関係した学会発表をいずれも主催者からの指名・招待によりおこなうことができた。くわえて、2024年秋に本研究代表者を大会長として更生保護学会大会を開催予定であり、同学会においても更生保護施設に関する話題を取り上げるなど、本研究成果の公表、社会還元について具体的な計画を有している。 さらに2024年から2025年にかけて、本研究のテーマと関係する、近時の更生保護施設の「処遇施設化」に伴う諸課題について書籍収録論文2本の執筆予定もあり、期間延長後の聞き取り調査や文献調査の結果を踏まえた研究成果の公表が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には本研究を終了予定であり、研究成果の公表に向けて追加の文献調査、聞き取り調査をおこなうとともに、論文執筆や学会発表の準備をおこなう。論文執筆に際しては、更生保護施設に求められる役割や入所者、退所者の事情に関する歴史的な変遷を踏まえる必要性も高いことから、2000年代以降の法改正に関する議論について文献調査を通じて再確認するとともに、更生保護施設をめぐる近時の法改正に対する施設関係者の見解等について聞き取り調査をおこなう。 さらに2024年秋には、本研究代表者を大会長とする日本更生保護学会大会が開催予定であり、同大会にて更生保護施設や更生保護事業に関する分科会やシンポジウムを企画することで本研究の知見の公表、社会還元を図る。 また、2023年度後半の調査を通じて、更生保護施設入所者の退所後の地域生活支援に際して、既存の地方自治体の生活保護行政や障害者福祉サービスの仕組みの下ではスムーズにいかないケースがあることが把握された。そのため、これらの法制度に関する情報を整理し、更生保護施設の入退所者が陥りがちな「制度の狭間」について検証し、そのような狭間を架橋する刑事政策及び地域福祉の枠組みについて、次年度以降の研究課題を見出したい。
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