研究課題/領域番号 |
20K13356
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
西貝 吉晃 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (50707776)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | サイバーフィジカルセキュリティ / 不正指令電磁的記録 / マルウェア / 重要インフラ / データの完全性・可用性 / サイバー・フィジカル・セキュリティ / 無権限アクセス / サイバー・セキュリティ / コネクティッドカー / サイバーセキュリティ / 不正アクセス / クラッキング / サイバー・フィジカル・システム / サイバー犯罪 / 刑法解釈学 / CIA / 刑事立法学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではサイバー・フィジカル・セキュリティの維持・向上を図るための刑法的規制のあり方を研究する。いわゆるIoTの普及に伴い,従前は原則的にサイバー空間内で閉じていたサイバーセキュリティ侵害が,フィジカル空間への大打撃となって現れる可能性がある。既に社会的にも重要インフラの保護が意識され,サイバー・フィジカル・セキュリティの維持に関するフレームワークが構築され,サイバーセキュリティ基本法も制定・改正される等してきている。 このような状況に鑑み,技術的なサイバー・セキュリティの向上策との協働を考慮しつつ,サイバー・フィジカル・セキュリティを適切に維持するために,どのような法規制が必要かを検討する。
|
研究実績の概要 |
2022年度は、サイバーフィジカルセキュリティそれ自体を保護する刑法的規制の研究の基礎となる、サイバーフィジカルセキュリティの侵害に結びつく犯罪類型の研究を行った。 まず、マルウェアを送り込むパターンの犯罪類型として不正指令電磁的記録に関する罪がある。これに関する重要な最高裁判例(コインハイブ事件)がでたために、同犯罪の使われ方についての将来予測も含めた法律論の研究に大きな時間を費やし、市民への啓蒙の論稿も含めて数本の論文を出すことができた。当然のことながら、サイバーフィジカルシステムに対する攻撃にマルウェアが使われることがあるのであり、その観点からも、本科研の基礎となる部分について、一定の研究を勧めることができた。 次に、ドイツ刑法303条aがデータの変更それ自体を処罰していることに着目し、これに対する調査を行っていた。データの変更それ自体を処罰する場合、この犯罪によって多様な事案類型が捕捉されることになるため、リサーチの量は膨大になる。しかし、同時に、我が国にそうした規定がないこともあいまって、そうした規定を入れることについて、我が国の刑法学としてどのような態度をとるべきか、について、悩ましい面も存在することから、相当程度網羅的な調査を要する。調査結果も長大なものになっているが、これをまとめて、2023年度中に公刊していきたい。 さらに、重要インフラに対する攻撃を加重的な犯罪類型を設けて処罰する刑法をもつ国にオーストリアがある。既に公刊したドイツ刑法303条bの加重規定に近い規定を重要インフラの保護という観点からもつものであり、ドイツ法との比較という観点から示唆が得られると期待している。オーストリアについては調査の困難さがつきまとうものの、同国の刑法のリサーチもある程度、進めている。2023年度中に、機会があれば公刊できれば幸いに考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サイバーフィジカルセキュリティの保護のために使われる犯罪類型が多様なものになっており、それを具に検討することに時間を要している。 かなり新しい分野であるため、各国の比較法的アプローチにも限界がある。すなわち、それぞれの国で、サイバーフィジカルセキュリティとか重要インフラといった言葉を使わずに条文が存在し、それに基づく議論がなされる傾向があり、直接的な手懸りが乏しい状況である。 それでも、一定の国においては、オーストリアなどの重要インフラの保護を意識した規定を置いているし、既にドイツ刑法303条bについての紹介は本科研の成果物として公刊している。 得られた知見をさらに収集すべきか、あるいは、得られた知見を元に、アイディアを練っていくべきか、考えるべきフェーズに来ている、と思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
最も重要なのは、各国法のリサーチなどから得られた知見を、我が国の刑法学に昇華させるための方法論である。これについて、一定の考えに基づき、サイバーフィジカルセキュリティの維持・向上のための刑法学的な知見を開陳していきたいと考えている。 ただ、ドイツ刑法303条aもサイバーフィジカルシステムに関わりが深く、これについてのリサーチを行い、調査結果を公刊してから、今までに得られた知見を用いた、現時点でのサイバーフィジカルセキュリティの保護のための刑法的規制の在り方について試論を展開してみたいと考えている。
|