研究課題/領域番号 |
20K13412
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
石野 敬太 早稲田大学, 政治経済学術院, その他(招聘研究員) (40844519)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | アリストテレス / 政治哲学 / 『哲学の勧め』 / 西洋政治思想史 / 哲学と政治 / 『政治学』 / 政治的動物 / 幸福 / 観照 / 実践 / 政治思想史 / ギリシア哲学 / プラトン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、アリストテレス政治哲学の骨幹をなす「幸福」の成立において、「観照」と「実践」が独特の連繋を有することを示す。そのために本研究は、第一に、これまで等閑に付されてきたアリストテレスの初期著作『哲学のすすめ』を主要テキストの一つとして取り扱い、同書における「観照」と「実践」の二種類の連繋の仕方を明らかにする。第二に、『哲学のすすめ』の研究から得られた知見に基づいて彼の後期著作『政治学』と『ニコマコス倫理学』を考察し、アリストテレスの幸福論に関するこれまでの理解とは異なる解釈を提示する。第三に、以上の考察を基に、アリストテレス政治哲学を政治思想史の流れの中で位置づけることを試みる。
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研究実績の概要 |
今年度は、『哲学の勧め』における知をめぐるアリストテレスの考察を検討し、同著第十巻で提示される哲学と政治の結節点として描かれる立法モデルの実質的内容をテクスト内在的に精確に理解することを試みた。 今年度の研究では、藤沢(1973)の研究を参考にしながら、イェーガー(1923)などの古典的研究やリアー(2004)などの近年の研究に反して、アリストテレスが『哲学の勧め』において哲学に関わる観照知と政治・倫理に関わる実践知を峻別していることを明らかにした。次いで、ウォーカー(2018)などの最新の研究に反して、アリストテレスが、観照的知識と実践的知識の区別に対応するかたちで、人間の魂を「知性(nous)」と「理性(logos)」に区別していることを示し、そのうえで、観照知と実践知の結節点である立法モデルの具体的内実を、①自然についての経験、②「最善の規準」すなわち「最善の法」の理論的制定、③「最善の規準」に照らし合わせての個別的価値判断、から成る階層的なモデルとして再構成した。 さらに、アリストテレスが『哲学の勧め』で規準として提示する「最善の法」が、プラトンが『ポリテイア』第九巻で範型として提示する最善のポリスと「言葉の上で制定された」(591c10)という点を共有するものの、「最善の法」は「天空に範型として掲げられ」(592b1)はいないことを示すことで、アリストテレスとプラトンの相違点を明確にした。 最後に、③「最善の規準に照らし合わせての個別的な価値判断」は、理論的に最善の規準に照らしたポリスにおける法の制定と、法に即した個別的な政治的判断という、二つの局面の分離の契機を内包しつつ成立している可能性があること、そして『哲学の勧め』において提示された立法モデルは、法の蓋然性の問題を未決の問題として残しながらも、市民の政治参加を容認する契機をうちに持っている可能性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究担当者の仕事の都合により、論文投稿や学会発表を実施するには至らなかったが、今年度の研究成果をまとめた上で、博士論文(論文題目「アリストテレス政治哲学における観照と実践の相剋と調停ー観照の政治的定位をめぐる一考察ー」、早稲田大学大学院政治学研究科)を公表した。
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今後の研究の推進方策 |
博士論文の一部を、英語論文として有力な査読付国際学術誌投稿する。また、研究担当者のアリストテレス政治哲学解釈に基づき、その現代的意義と政治思想市場の位置づけに関する考察を行う。
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