研究課題/領域番号 |
20K13415
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 中央学院大学 |
研究代表者 |
坂井 亮太 中央学院大学, 法学部, 准教授 (20735386)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 政治理論 / 民主主義 / 認識的デモクラシー論 / 数理モデル / システマティック・レビュー / ロバストネス分析 / 多様性が能力に勝る定理 / 熟議 / システマティックレビュー(系統的レビュー) |
研究開始時の研究の概要 |
多数決や熟議の結果の正しさは、デモクラシーへの信頼を支える役割を果たしている。近年、民主的決定手続が正しい答えを導くメカニズムを解明する数理モデル分析が盛んとなり、分析結果の蓄積が進んでいる。しかし、蓄積された複数の数理モデル分析の結果を活用して分析の信頼性を高める研究は、世界的にも未着手となってきた。 本研究では、系統的レビュー(systematic review)の方法を用いて、研究蓄積をモデル毎に統合することで、数理モデル分析の信頼性を高めることを目指す。熟議、多数決、ベイズ更新の3種類の数理モデル群を調査し、熟議・審議会・会議における参加者の最適構成を明らかにする。
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研究実績の概要 |
当該年度の主な研究実績は、(1)学会機関誌での招待論文の掲載、(2)紀要論文の発行、(3)学会報告、(4)各種研究会報告に分かれる。 (1)計画行政学会の機関誌に、招待論文「熟議における手続と実質の架橋メカニズム:認識的デモクラシー論の貢献」『計画行政』 45(4) 33-38、2022年を公表した。この論文は、「くじ引き」民主主義についての論文である。本稿では、規範的政治理論で展開されたデモクラシーの認識的機能についての議論が、公共政策におけるミニ・パブリックスの実践を認識面から支援することを示した。 (2)大学紀要「熟議と科学的探究のモデル比較:『多様性が能力に勝る定理』と『認識的地形モデル』」『中央学院大学法学論叢』 36(1) 65-92、2022年を公表した。本稿は、民主主義と専門知の分業についての論文である。本稿では、「認識的地形モデル(ELM)」を取りあげ、「多様性が能力に勝る定理(DTA)」と比較した。本稿は、民主主義と専門知との分業をめぐる問いに答えるものである。 (3)日本政治学会 2022年度総会・研究大会(於 龍谷大学、2022年10月2日)において「政治理論におけるモデル構築と理想化:ロールズの理想理論と認識的デモクラシー論の比較」と題する研究報告を行った。 (4)各種研究会報告については、以下を実施した。① 現代規範理論研究会(オンライン、2022年7月9日)「コスモポリタニズムとデモクラシー:認識的デモクラシー論からの考察」、②日本公共政策学会関西支部例会(オンライン、2023年2月18日)「誰を会議に呼ぶべきか?:やっかいな問題と認識的デモクラシー論」 、③日本ミニ・パブリクス研究フォーラム・オンライン研究会(オンライン、2023年3月22日)「熟議における手続と実質の架橋メカニズム」。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、研究計画において目標としていた論文発表および学会報告を実現することができた。そのため、研究はおおむね順調に進捗しているといえる。 本研究は、系統的レビュー(systematic review)の手法を用いて、意思決定手続に関するこれまでの研究蓄積をモデル毎に統合することで、数理モデル分析の信頼性を高めることを目的としていた。研究手順は以下である。①まず、着想を科学哲学におけるモデル比較の手法であるロバストネス分析にもとめる。②この分析手法の弱点である広範な比較サンプルの収集という課題を、新たに系統的レビューの方法で補う改良を行う。③構築した分析手法を用いて、熟議、 多数決、ベイズ更新の3種類の数理モデル群を調査し、熟議・審議会・会議における参加者の最適構成を明らかにする。 既に、このうち①および②についての研究成果を公表してきた。2022年度は、③の段階として、熟議の数理モデルについて、そのモデル分析と現実世界への応用可能性を探究し、学術論文の公表を行った。しかし、研究計画において設定した3段階のステージのうち第3段階の一部分を実現することができたため、研究はおおむね順調に進捗しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を延長した4年目となる2023年度は、多数決、ベイズ更新についての個別の数理モデルに関する研究を進める。既に、熟議の数理モデルについての研究は着手済みであり、学術書の出版と論文公表の成果を実現している。 2022年度は、論文公表を通じて、本研究計画の理論的検討および提案手法の応用を実現した。なかでも、熟議の数理モデルである「多様性が能力に勝る定理」について検討することを通じ、熟議民主主義論が提唱した、適正な決定手続が正しい結論を導くメカニズムの解明に貢献した。 2023年度は、同様の検討を横展開して、多数決の数理モデル「コンドルセの陪審定理」、予測の更新モデルである「ベイズ更新」への応用を試みる。コンドルセの陪審定理についてのレビューを実施した先行研究(Grofman, Owen and Feld, 1983)を乗り越えて、最新の研究を含めてシステマティック・レビューを実施することにより、近年蓄積が進む最新の研究成果を集約する。ベイズ更新のモデルについての検討も、研究期間4年目の課題とする。
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