研究課題/領域番号 |
20K13464
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07020:経済学説および経済思想関連
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
金子 創 大分大学, 経済学部, 准教授 (20737639)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 搾取 / 搾取基準の多義性 / 社会関係資本 / 異時点間資源配分 / 国際的不等価交換 / 搾取の継起性 / 搾取の生成 / 搾取の継起生 / 不平等基準 / 異時点間意思決定 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,主体間における所得・資産格差の,時間を通じた変化に関して,規範的な観点からの検討するために異時点間資源配分のモデルを構築し,その配分について評価する1 つの不平等基準として搾取概念を導入する.特に,主体の異時点間における意思決定に関して,いくつかのバリエーションを検討し,それに応じて搾取が生成されるかどうかの特徴づけや,ひとたび生成された搾取の動学的性質について調べる.これは意思決定のあり方を規範的な観点から位置づける試みであるが,このことによって,継続する世界的な格差の拡大傾向を適切に評価するための認識はより豊かになると期待される.
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研究実績の概要 |
本研究の主な目的は「異時点間の(非)搾取的な資源配分の実現可能性の検討」,そしてそれを通じた「倫理的な評価を可能にするベンチマークの導出」である. 2022年度はそれぞれについて進展があった.第一に,後者に関して,昨年度からの継続的な取り組みとして,搾取基準に関する倫理的な評価を巡る歴史的な展開について学説史的にアプローチする研究である.経済学の歴史においては倫理的な論点をどのように考察の遡上に載せるかという議論が多面的に展開されてきているが,当該研究はそうした歴史に裏付けられた倫理的評価の多義性と経済学の近年における実証面に関する発展との調和の可能性について検討したものと位置づけられる.この成果は21年度に政治経済学・経済史学会の共通論題で報告するために準備されたものであるが,その後,当該学会の発行する『歴史と経済』誌に掲載された. 第二に,前者に関する取り組みとして,社会関係資本の要素を導入したモデルを構築し,その下で搾取的な資源配分の実現可能性について検討した.社会関係資本は,しばしば正の効果・側面が強調されがちな概念であるが,当該モデルではその存在によってより深刻な搾取関係を生成する均衡を導出している.また,特定の状況においては,一定の政策が格差をより拡大する場合についても検討している.この内容は,政治経済学・経済史学会やその他の研究会で報告し,またそこでのコメントを受け,現在,出版に向けて改訂中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず計画当初に想定していた基礎理論的な部分についての成果の公表については,ここまで進んでいない.他方で,代替的な計画として挙げていた応用的なトピックとして,社会関係資本を考慮したモデルによる分析はより発展的な議論に結びつくものである. 以上を総合的に勘案し,上の評価と判断している.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度から継続していた取り組みと共に,新しい分析に取り組んだ.特に社会関係資本の要素をモデルに導入した分析は,搾取概念を精緻(伝統的な搾取と,より深刻な搾取)に区別しうる結果を含んでおり,大いに発展の余地を残している. この方向性は,残りの計画期間においても成果を見込めるものである.
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