研究課題/領域番号 |
20K13495
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 武蔵野大学 (2022) 大東文化大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
那須田 晃子 武蔵野大学, 経済学部, 講師 (10847213)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 農村電化 / インフラ整備 / 労働市場 / 電力の質 / GIS / スピルオーバー / カンボジア / 東南アジア / 家事労働 / インフラ投資 / 経済発展 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、「輸入電力による農村電化」が家計と個人の就労行動に与える影響を分析することである。電力の供給安定性や電圧レベルによって、企業や家計が導入することができる技術が異なる。しかし家計調査データからは、家計の電化状況の把握は可能だが、電気の質の違いについて区別することができない。このため、中電圧で安定的に電力供給される隣国からの「輸入電力」に着目し、農村電化が途上国の非農業化にどの程度貢献したのかについて定量的に分析することを試みる。より具体的には(1)農業部門と非農業部門の就労率変化(2)国内企業と外国企業の立地選択(3)移住人口について分析を行う。
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研究実績の概要 |
近年、電力が与える経済効果の分析は蓄積されてきたが、その結論は対象調査地域や分析手法によって異なるものであった。これは地域による特性の違いなのか、電力の品質(安定性、電圧、価格)による違いなのかを区別することができなかった。
本研究では、比較的安価で安定供給される隣国からの「輸入電力」に着目し、農村電化が途上国の非農業化にどの程度貢献したのかについて定量的に分析することを試みる。分析対象は、ほぼ同年代に輸入電力が配電された同州内の二地域である。電力アクセスの指標について配電ライセンスに基づく「配電エリアマップ」と「地理情報システム(GIS)」「人口センサスデータ」を組み合わせて、各農村が物理的に配電可能な地域内か地域外かを特定した点が新しい。
農業部門と非農業部門の就労率変化について定量分析を行ったところ、電化された二地域で大きな差異があることを確認した。A地域では、非農業部門の就業率が大幅に向上しただけでなく、その周辺の未電化地域にも効果が波及していることが明らかになった。電化による雇用拡大によって、電力にアクセスできない地域の就労行動にも影響を与えたと言える。一方のB地域では、ほぼ同時期に電化が行われたのにも関わらず、非農業部門の就業率は向上しなかった。家計の電力使用率は大幅に向上していることから、各家計に電力は接続されているのにも関わらず、就業行動に変化が起きなかった。品質と価格が等しい電力であっても、配電地域の特性によって効果に差異が生じることが明らかになった。また電化の効果は、未電化地域にも波及する可能性が示唆された。この結果から、途上国における全国規模の電力投資は必ずしも経済効果をもたらすとは言えないことが示されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では、本年度は追加的なデータの入手と分析、執筆作業と学会での研究発表を中心に活動を行い論文完成を予定していた。データの入手はスムーズに進んだが、論文執筆作業が進んでいない。主な理由としては、新型コロナウィルスの影響により研究時間を削減せざるを得ない状況であったことと、研究代表者の体調不良のため療養が必要であったことである。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、引き続き執筆作業を進めることと、追加的な分析を行う。特に非農業部門就業率が向上した地域では、どのような職種で雇用拡大が起きたのかを明らかにする。また本年度は執筆作業を中心に行い、論文の完成を目指す。
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