研究課題/領域番号 |
20K13501
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
原口 純一 神奈川大学, 経済学部, 准教授 (40827929)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 混合寡占市場 / 価格競争 / 数量競争 / タイミングゲーム / 外部性 / 競争構造 |
研究開始時の研究の概要 |
公企業と私企業が併存する市場を考え、企業が価格設定のタイミングを選択できる状況において、生産における外部性が企業の意思決定に与える影響を分析する。ここで外部性とは、例えば大気汚染など、市場を介さずに他者に与える影響のことであり、広く現実に観察される。私企業は自社利潤の最大化を目的に意思決定し、公企業は社会厚生を考慮した意思決定を行うと仮定する。こうした状況で、価格設定のタイミングや設定する価格を通し、それぞれの目的を達成するために企業がどのような意思決定を行うのか、またそうした意思決定に外部性がどのような影響を与えるのか分析する。結果としてどのような競争構造や社会厚生が達成されるのか議論する。
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研究実績の概要 |
社会厚生の最大化を目的に意思決定する公企業と自社利潤の最大化を目的に意思決定する私企業が併存する混合寡占市場において、企業が競争の構造を内生的に選択できるような状況における企業の意思決定について考察した。本研究では特に生産における外部性が企業の意思決定に与える影響について議論した。ここで外部性とは、例えば大気汚染など、市場を介さずに他者に与える影響のことであり、広く現実に観察される。 まず、企業の価格競争を前提とし、価格の設定のタイミングを内生的に選択できる状況において、外部性が各企業の意思決定に与える影響を分析した。既存研究では外部性が存在しないような状況において企業が価格を決定するタイミングを内生的に決定できるときに、公企業も私企業も価格を先に設定しようとするため、両企業は同時に価格を設定する状況が達成されることが示されている。本研究においてこうした状況に生産における外部性が企業の意思決定に与える影響を考察するため、外部性の程度を表すパラメータを明示的に導入し分析を行った。結果として企業の価格設定のタイミングに外部性が影響を与えることを示した。 また、企業が価格で競争するか、数量で競争するかを内生的に選択できる状況において、生産における外部性が各企業の意思決定に与える影響を分析した。既存研究では外部性が存在しない場合に各企業が価格で競争するかと数量で競争するかを内生的に選択できる場合には、公企業も私企業も価格で競争することを選択し、結果として、企業は価格競争をする状況が達成されることが示されている。本研究においてこうした状況に生産における外部性がどのような影響をあたえるのかを考察するため、外部性の程度を表すパラメータを導入し分析を行った。結果として企業の価格で競争するか、数量で競争するかといった意思決定に生産の外部性が与える影響を議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
混合寡占市場において、企業が競争の構造を内生的に選択できるような状況で生産における外部性が企業の意思決定に与える影響について議論した。 まず、混合複占市場で企業が価格設定のタイミングを選択できる状況において、生産における外部性が各企業の意思決定に与える影響を分析し、結果として外部性の程度によって両企業が同時に価格を設定するという既存研究で得られた結果とは異なる競争構造が達成されうることを示した。どのような競争構造が達成されるかは外部性の程度に依存して決まることを示した。こうした結果は既に査読付きの国際的な学術誌に発表されており本研究の成果が一定の評価を得ていると考える。 また、混合複占市場で企業が価格で競争するか、数量で競争するか内生的に選択できる状況において、生産における外部性が各企業の意思決定に与える影響を分析し、結果として外部性の程度によって両企業ともに価格で競争するという既存研究で得られた結果とは異なる競争構造が達成されうることを示した。またどのような競争結果が達成されるのかは外部性の程度に依存して決まることを示した。こうした成果も論文としての体裁を整え学術誌への投稿、採択を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
混合複占市場で企業が価格で競争するか、数量で競争するかを内生的に選択できる状況において、外部性が各企業の意思決定に与える影響に関する研究について、その成果を論文として体裁を整え学術誌への投稿、採択を目指す。 公企業は国内余剰を最大にするように意思決定を行うと仮定しているので、混合寡占市場における企業の意思決定には私企業の外国資本比率が影響を与えることが知られている。また、現実には完全な公企業だけでなく、部分的に民営化されている公企業が存在している。部分民営化された公企業は国内余剰だけではなく国内余剰と公営企業の利潤の両方を考慮にいれて意思決定を行っていると考えられる。こうした状況は混合寡占の文脈では公企業の目的関数を国内余剰と公企業の利潤の凸結合として扱うことでモデル化され分析が行われている。現実の混合寡占市場ではこうした事例が数多く観察されているのでこうした状況を踏まえ、今後は私企業の外国資本比率や公企業の民営化の影響を明示的に扱うことのできるパラメータを導入した分析の拡張を計画している。 さらに、競争構造の内生化に関する研究について、既存研究では価格と数量の設定のタイミングと価格で競争するか数量で競争するかの両方を内生的に選択できる状況も議論されている。こうした研究を念頭に企業の生産に関する外部性が企業の意思決定に与える影響を議論することも計画している。
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