研究課題/領域番号 |
20K13517
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07050:公共経済および労働経済関連
|
研究機関 | 大阪大学 (2022) 早稲田大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
菊地 雄太 大阪大学, 社会経済研究所, 特任助教(常勤) (60782117)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
|
キーワード | イノベーションの実証研究 / 診療と研究のトレードオフ / 研究活動 / Roy/Borjasモデル / 時間配分 / 研究成果 / マルチタスク |
研究開始時の研究の概要 |
大学の研究者は産学連携や教育、学務といったマルチタスクの中で研究を行っている。そこで、本研究では大学の研究者の研究、産学連携、特許取得のための活動、教育等への時間配分と、論文や特許といった研究成果を結びつけて、どのように時間を使ったらどのような研究成果に結びつくか、定量的に含意をもたらすことを目的とする。その際、それぞれの活動への投入は、短期的および長期的なトレードオフや補完関係を考慮してどのように行われるかという意思決定のプロセスを可視化し、それが研究生産性にどのように結びつくのかを分析する。
|
研究実績の概要 |
研究活動及び、企業のイノベーション活動に関する実証研究として二つの分析を行った。 一つ目は、日本の明治時代の綿糸紡績産業のデータを用い、 De Loecker et al. (2020)の生産アプローチによる企業の市場支配力推定を行なった。本研究を開始するに当たっては異動先である大阪大学社会経済研究所のSerguey Braguinsky教授にデータの使用について協力を仰ぎ、データとその作成過程についての詳細な情報をいただいている。暫定的であるが、幾つかの結果を得た。その一つとして、少なくとも、ハイエンド製品のみを生産している企業のマークアップの分布は、ローエンドのみを生産している企業のマークアップの分布と有意に異なり、かなり大きい傾向にあるということを確認した。第二に、企業は製品多角化を行うと、そうしなかった企業に比べて有意にその後のマークアップが向上する可能性があるということをStaggered DID分析を用いて確認した。その際近年のStaggered DIDによって捉えられる処置効果の異質性の問題に対処した。これらの結果により、企業のイノベーション活動と市場支配力についての示唆が得られることが期待できる。 二つ目の分析としては、一橋大学の中島賢太郎氏の協力を仰ぎ、明治期以降の日本の特許発明者のデータを使用させていただき、大卒者の技術傾向が、非大卒の技術傾向に影響を与えるかを分析し、幾つかの暫定的な結果を得た。特許データが時系列データである特性を活かし、両者の特許発明傾向を変数として用いてベクトル自己回帰モデルを推定した。その結果、これまでのところ、大卒者の特許発明傾向は後者の特許発明傾向に対してのグレンジャー因果性があることを確認できること、インパルスリスポンス応答関数により外生的なショックを与えた時、その影響はあまり強くないものの正であることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
イノベーション活動に関する実証分析の継続を進めることを目的として大阪大学に異動し、上記研究を行なっている。一つ目の研究について一定の成果は出つつある。その過程で、生産アプローチに内在する推定上の課題、つまり複数の静学的に決定されるインプットがある場合に企業のマークアップが複数推定されてしまうこと、そして、複数材を生産する企業に関してインプットの弾力性を識別できるのかどうか、に対処する必要があり、既存研究との接続を行いつつ、どこまでならば識別できるか、手法の点から改善を提案している。二つ目の研究について、ローカルレベルにおけるパテント活動に影響を与えるような操作変数をいくつか考案し、追加的な分析を行っている。幾つかの操作変数について、除外制約を満たすことは難しいことが予想されるため、本分析では複数の操作変数の候補やDID推定を用いることによる様々な観点からの分析を加味することにより、多面的に分析する方向性に舵を切った。
|
今後の研究の推進方策 |
分析の過程で生じた推定上の課題に対処するために、計量経済学的な議論の精緻化と、結果の頑健性のチェックを行う。得られた結果について成果物としての論文を執筆する。上記二つの研究について、ワーキングペーパーとして本年度内に完成させ、国際学術誌への投稿を目指す。また、国内学会、国内の大学で行われる研究会、国際学会に参加し、成果を報告する。
|