研究課題/領域番号 |
20K13537
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
張 テイテイ 東北大学, 経済学研究科, 特任助教 (60803046)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 史料解読 / 学会報告 / 労働力移動 / 労働力市場 / 複合的な生業構造 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は近世の労働力移動について、人口史的な分析を踏まえつつも、その労働の実態及びその背景をなしていた社会構造や生業構造の特性を明らかにすることを目的としている。①博論の延長上に、二重の労働力市場の構造的特性を判明した信州川中島今井村を取り上げ、未解明だった村の生業構造と社会構造の社会経済史的分析を行う。②町場だった信州小県地方(長野県小諸市)の地方城下の事例(小山家)を取り上げ、その人口動態、生業構造や雇用構造の特性を明らかにする。③労働力移動研究の古典的事例である信州諏訪郡横内村の事例を取りあげ、労働力供給村の社会構造や生業構造について、複合的な生業のあり方に着目しながら再検証してみる。
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研究実績の概要 |
今井村の村文書の解読と分析を中心に研究を進んだ。撮影済みになった今井村の庄屋文書(五人組帳や御用 日記等の村政文書、村明細帳、皆済目録や御物成金納請取帳等の貢租・課役関係文書)の部分の解読と分析を中心に行った。近世期の今井村は、近隣村落の労働力人口「需要元」であり「供給元」であったこと、そしてそれと同時に、江戸武家屋敷や松代藩家中向けの武家奉公市場に対する労働力の「供給元」でもあったことがすでに判明した。今井村が近隣の村々から吸収する労働人口は、「下人」と呼ばれる家内奉公人的な労働力として提供されるものであり,今井村内部においては社会階層の下部に位置する存在であったと考えられる。しかし,今井村が江戸・松代藩家中向けに排出する労働人口の多くは,社会階層的には農村における「下人」層とは異なる武家奉公人であり,明らかに「格」の高い社会階層に属する雇用先であると考えられる。 その上で、今井村が求めていた労働の中身と排出した労働の中身、期間、年齢に関してさらなる詳しい分析ができた。また,今井村の通婚圏の範囲は,今井村に労働人口を提供する労働力市場―下人供給市場―の範囲と,さらに今井村から排出する奉公人の労働力市場の範囲とがかなりの部分が重なっていた。三者の間には、婚姻による親類関係や姻戚関係が、労働力調達ネットワーク,もしくは長い歴史を経て得意先との緊密な関係を形成した労働力調達ネットワーク等に結びつき、相互に一定の親密な社会関係を構成しやすい構造になっていたのではなかろうか。 現在育児の真っ最中で、研究を一時中断している。研究を再開してから、近々この研究成果もまとめたいと考えている。また、史料の未撮影した部分に関しては、研究再開してから、できるだけ早めに調査に行って撮影したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの流行の影響、そして妊娠、出産のため、当初計画した信州地方および東京への資料調査を実施できなかった。産前産後の休暇又は育児休業の取得に伴う補助事業延長申請をした。研究の再開は2023年8月1日である。そのため、当初の計画より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
研究再開後に、これまでの史料調査と分析状況を前提に、研究成果の纏めに重点を置く。具体的には、日本村落研究学会、社会経済史学会、比較家族史学会など国内学会で研究成果を報告する。そして、調査報告、収集資料紹介などを中心とした研究成果報告書、投稿論文を作成し、英訳とともに電子出版などによる国内外への出版刊行を企画・実施する。さらに、必要に応じて補充資料調査と史料撮影作業を行う。
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