研究課題/領域番号 |
20K13539
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 篤史 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 助教 (40750435)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | アジア銀吸収 / 銀貿易 / 為替市場 / アジア銀流通 / 多角的決済 / 国際通貨システム |
研究開始時の研究の概要 |
近年の国際金融史の議論では「西洋の金吸収」とともに、「アジアの銀吸収」が国際通貨システムの安定に重要な役割を果たしたことが示唆されている。本研究は1850-60年代のアジアの銀吸収の規模と流入先を統計的に把握し、その銀流通のメカニズムをアジア各都市の金融データによる現送点の分析から解明する。また、銀流通の担い手として為替銀行に着目し、その金融取引の実態を帳簿や貸借表といった経営資料から明らかにする。この実証研究により、近代世界経済を支えた国際通貨システムの形成において、「従属的」と捉えられてきたアジア経済の役割に再検証を加える。
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研究成果の概要 |
本研究の目的は、19世紀中葉における「アジアの銀吸収」の実態を解明することであった。第一に、銀吸収の実態を数量的に把握すべく、アジア各地の1820年代-70年の銀貿易の規模とトレンドを統計から復元した。その結果、アジアの西欧からの銀輸入額は、1840年代は平均2万ポンドだったものが、1850年代には7百万ポンド、1860年代前半には9百万ポンドへと増大したことが判明した。さらに、アジアの銀貿易のメカニズムを解明すべく、西欧・アジア各地の銀市場価格と為替レートを用いたブリオン現送点による分析の結果、1850年代-60年代にかけてアジアに銀を輸入する裁定取引の利益が生じたことが判明した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究成果の学術的意義は、国際通貨システムの通説に修正を迫る新たな議論を提示したことにある。従来は19世紀末に成立した国際金本位制が国際通貨体制の原型だと認識されてきた。それに対して、近年の金本位制以前の西洋複本位制に注目する研究と共に、本研究は19世紀中葉に西洋だけでなくアジアも核となりながら、多様な貨幣システムの併存により機能した国際通貨システムの存在に光を当てた。この研究により、現代にいたる国際通貨体制の発展史は、経済グローバル化が始まった19世紀初頭に遡るとともに、各地域固有の貨幣システムに着目した視点から再構築される必要性が提唱されたといえる。
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