研究課題/領域番号 |
20K13541
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
佐藤 淳平 岡山大学, 社会文化科学学域, 准教授 (50792496)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 財政 / 軍事 / 南京国民政府 / 北京政府 / 地方予算 / 江西省 / 主計処 / 広西省議会 / 予算 / 土地調査 / 国民政府 / 国家統合 |
研究開始時の研究の概要 |
従来の清末民初の財政史研究では、1920年代前半における各省の自立化と中央政府への上納金の途絶を念頭に置き、中央政府と省政府は同じ財源を奪い合う利益相反な関係であるとする見方が強かった。 しかし、各省の自立化は中央政府への上納金の負担をなくす一方、軍事費を増大させ省財政を悪化させるという負の側面も有していた。そのため、各省議会は軍縮と教育費及び実業費の拡充を省政府に訴えるようになった。 そこで本研究では、北京政府末期から国民政府初期にかけての財政的な変化とそれをめぐる政府当局者や知識人の議論を追うことで、国民政府による国家統合に対する同時代人の期待及び実際の財政的効果について明らかにする。
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研究実績の概要 |
8月23日に開催された明清史夏合宿2022において、「近代中国の財政と軍事」というテーマで研究報告をした。同報告では、北京政府期、特に袁世凱政権後に見られた、各省の長官が軍事権と財政権を掌握し、中央政府が弱体化し分権化していく傾向が、南京国民政府により再び集権化へと向かった理由について財政と軍事の面から解明した。清末民初の軍事費の推移や、北京政府末期の中央政府、省政府レベルでの軍縮の動き、南京国民政府初期の軍縮の動きについて言及し、北京政府期に北京政府と連省自治派のエリート層が兵員数の削減が必要であるという認識で一致していたこと、南京国民政府が国軍編遣会議において兵員数削減の方針を明確に示したこと、長引く内戦のため、中国の軍隊が陸軍に偏重しており、国防に十分に対応できる能力を欠いていたこと、当時の中国の財政規模が小さかったため、歳出に占める軍事費の割合は高かったものの、列強の軍事費と比べれば必ずしも多額ではなかったことを指摘した。コメンテーターから、ブリュアの財政軍事国家に準えて当時の中国も財政軍事国家と言えるのかという問いかけがあった。これに対して、国民の所得を把握する能力が中国はイギリスに遠く及ばなかったことや、国家の信用力が十分に確立されておらず、国債の返済が滞ることがあったことなどが議論された。 また金子肇『近代中国の国家と商人』(有志舎、2022)の書評を『図書新聞』3571号に執筆した。同書は主に上海の同業団体による徴税請負を分析対象としている。上海市档案館所蔵の未公刊史料を積極的に活用したことを評価しつつ、あくまでも上海の特殊な事例である可能性が高いことや、銀行公会や銭業公会といった金融業の同業団体に対する言及がほとんど見られず、財政史や金融業の同業秩序という文脈から十分に研究の位置づけがされていないといった問題点を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大に伴う中国の入国制限措置および公文書館における閲覧制限の影響もあり、南京の公文書館における史料調査は未だに実施できていない。一方、台北の国史館などのウェブサイトにおける史料収集と『善後会議公報』や『歳計年鑑』といった公刊史料の読解を進め、昨年8月に明清史夏合宿2022で研究報告をした「近代中国の財政と軍事」を基に学術雑誌への投稿を目指して論考を準備している。
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今後の研究の推進方策 |
中国の入国制限措置は徐々に緩和されており、中国到着後のPCR検査及び集中隔離が不要になったため、ビザの申請と南京の公文書館における史料閲覧が許可されれば、現地での史料調査が可能な状況となった。現地での史料調査を実施し、その成果を組み入れた形で、「近代中国の財政と軍事」に関する研究成果の公刊を目指す。国民政府主計処が軍事費の問題を論じる際に列強との国際比較を行っていたことが史料から看取されたため、列強の軍事費に関する研究成果や当該国の史料も必要に応じて分析対象に取り入れる予定である。
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