研究課題/領域番号 |
20K13582
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 大阪経済法科大学 (2022) 文部科学省科学技術・学術政策研究所 (2020-2021) |
研究代表者 |
氏田 壮一郎 大阪経済法科大学, 経営学部, 准教授 (30599402)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 経営学 / イノベーション / 製品開発 / 暗黙知 / 形式知 / 感覚製品 / 例 / メタファー / 感性消費 / 表出化 / ものづくり |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、音響機器や香料など、ユーザーが五感を通して得る便益を中心に持つ感性消費型製品の開発を対象に、主観的な傾向が強いこれら製品便益をどのように開発しているかを究明するものである。先行研究といくつかの事例を分析すると、これら開発は暗黙知を形式知に知識変換するプロセスに合致することが判明しているが、テストユーザーなど市場に近い人たちが良いと評価する感覚を「模倣」した暗黙知と、開発側が開発経験に基づき「仮想」した暗黙知による製品便益の評価基準が存在する。経営上一長一短がある2特徴を比較検討することで研究の精緻化を行い、学術的だけでなく実務的な貢献を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は「模倣」または「仮想」の二つの視点を通して、暗黙知の表出化における冗長的な側面を、どのように軽減させるかといった問いを中心にしている。そのうえで、当年は、これまで収集した企業の情報を整理しつつ議論や考察を加え、組織的な感覚の基準という概念を導出できた。 まず製品開発は複数部署または担当者同士の連携作業でもある。この組織内における意思疎通としての「例示」という行為に焦点を当てた。例示は、それを標榜することで暗黙知を感覚として共有でき、さらに開発プロセスの冗長性低減とリスク減少にもつながる。またこのような例示には、具体的に表現されたものから、抽象的に表現されたものまで、さまざまなものが存在する。この“例え”の特徴が、組織における共同化や内面化の程度を示す可能性があることを発見できた。 この例示には、具体性や抽象度で見た場合、炊飯器開発における「かまど炊きの味」といった特定物を指すものから、「自社のデザイン」などの主観的な感覚などを示すものや、「プロのもみ味」といった多くの感覚を包括するものまで存在する。これらから考察すると、抽象度が高い“例え”は解釈にゆれを生み出す可能性があり、創造性が生まれやすい一方で、過度な試行錯誤が増加し冗長性を生じさせる可能性もある。それに対して、具体性が高いということは、解釈の硬直化を生じさせるが、試行錯誤の量が減少し、冗長性が減少する可能性がある。例えの設定が製品開発において重要な要素になるともいえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでにマッサージチェアや炊飯器、音響機器、調理機器、香料などの感性消費型製品ついて既に一次調査を完了している。このような感性消費型製品の開発では、プロトタイプの試行錯誤を繰り返すことが重要であり、その際に評価を行い試作が生み出す感覚を調整することで開発が進捗する場合が多い。本年度は、このプロトタイプ評価の過程において、評価の基準となる“例え”がどのような役割を果たし開発となる感覚が共有されるかについて、定性的にアプローチし、いくつかの考察を得ることができた。 しかしながら、企業への取材やデータ収集などが少し遅れており、これについては翌年度に作業を持ち越すことにしている。
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今後の研究の推進方策 |
2013年より本研究テーマに関連した多くの事例を収集しており、すでに企業のネットワークも存在する。食品関係の企業についても、いくつかアプローチを行っており、資料の提供を受けている。この方向性で今後も研究を推進する。 これまではインタビューを中心とした定性的な研究手法が基本であるが、企業開発者へのアンケート調査を行う可能性も考えられる。このように研究の目的達成に向けては、状況次第で手法を変更するなどの準備も検討している。
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