研究課題/領域番号 |
20K13646
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 亜細亜大学 |
研究代表者 |
積 惟美 亜細亜大学, 経営学部, 講師 (50824223)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 経営者のバイアス / 経営者の自信過剰 / 資本調整 / リキャップCB / 自社株買い / 利益調整 / 利益の質 / 利益平準化 / 利益の持続性 / 繰延税金資産 / 経営者の裁量 / 経営者バイアス / 回収可能性の判断 / 評価性引当額 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、会計上の見積り・予測をインプットとした会計基準が増加している。本研究の目的は、そうした会計上の見積り・予測によって生じる経営者バイアスや測定誤差が会計数値にどのような影響を与え、資本市場に対する経済的効果をもたらすかを検討することで、今後の会計基準設定において有用な示唆を得ることにある。 そのために、経営者による企業全体の将来の収益性の見積りをインプットとする繰延税金資産の回収可能性判断に焦点をあてる。これにより、実際の会計数値における経営者バイアスがもたらす経済的効果について、その経済的な影響度や抑制可能性、投資家への影響を検証する。
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研究実績の概要 |
今年度は,執筆した論文投稿に専念し,研究論文の投稿および査読対応を主に行った。経営者バイアス,とくに経営者の自信の程度の代理変数の作成および繰延税金資産に掛かる評価性引当額の推定を行った。2022年度もコロナ禍の影響で引き続き,国内学会や研究会はZOOMにての開催,海外学会は中止という状況がつづいており,とくに海外学会が中止になっているという点から,海外研究者から見た本研究課題の拡がりを検討するうえでのコメントを十分に得る機会が少なかったと言える。しかし,研究計画にもとづき,大きく2つのことを実施した。 第1に,データベースの整備およびデータ分析である。2021年度実施した先行研究のレビューにもとづいて,研究上必要な代理変数やその作成に必要なデータの取得,データベースの構築をほぼ完了した。構築したデータベースによって検証を進めているところである。 第2に,論文の執筆,投稿,査読対応である。経営者の自信の程度は,近年,欧米のファイナンス分野において代理変数化が進展してきた概念であり,日本の経営者行動や財務会計分野に適用するために,まずは会計数値との関係性について検証する必要性があった。そのため,日本の経営者行動との関係を検証した論文を2本執筆した。一本は査読付き雑誌『経営財務研究』に掲載予定となっている。しかし,もう一本は査読付き雑誌投稿を行ったものの,査読第2ラウンドで落ちてしまったため再投稿する予定である。また,経営者の自信と,利益の質,利益調整行動,及び繰延税金資産の回収可能性判断の関係性に関する研究を進めており,2023年度中に雑誌投稿を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の進捗状況は,やや遅れているといえる。2022年度において1本の論文を査読付き論文雑誌に掲載予定とすることができたものの,予定していたよりもやや遅れている。とくに,経営者のバイアスが会計数値に影響を与えるのかという前提を確認するための研究を行ってきたが,査読対応および査読に落ちて修正・再投稿する必要性がでたことから,繰延税金資産の回収可能性判断への影響に関する検証に遅れが生じている。経営者のバイアスと会計数値との関係性に関する検証の雑誌投稿は途中であるものの,検証自体はある程度進んでいるため,そこで得た知見をもとに,今年度中に繰延税金資産の回収可能性判断への影響に関する論文執筆を行い,査読付き雑誌への投稿を進める予定である。上位を含め,現時点において,査読付き雑誌投稿済みで掲載予定の論文が1本,執筆中の論文が2本,先行研究の整理・仮説構築・分析中の論文が1本あるため,これらを今年度中に完成させ,査読付き論文雑誌に投稿する予定である。 また,経営者の自信の程度の代理変数の作成時に利用しようとしていたテキストマイニングは難航している。日本においては経営者の個人的特性を捉えることに関するコンセンサスのとれたテキストデータが十分に整理されているとはいえないため,その選定作業に困難が生じている。現状においては,有価証券報告書の「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」を利用することを念頭に置いているが,果たして実用に耐える代理変数化が実現するかは不透明であるといえる。この点については,現在,先行研究において利用されている複数の代理変数で頑健性を検証することで対処している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の研究活動としては,これまで行ってきた研究をまとめ,未投稿の論文の学術誌への投稿を中心に進めていく予定である。そのため,1つの国内学会(日本会計研究学会)および海外学会(Asian-Pacific Accounting Association)での報告を予定しており,報告後,頂いたコメントをもとに修正作業をし,学術誌への投稿をすすめていく。 具体的な予定としては,まず「(1)経営者の自信過剰と自社株買い」に関する研究を査読付き学術誌に掲載することを目標としている。その後、学会および研究会で頂いたコメントをもとに修正作業を行っている「(2)経営者の自信過剰と利益の持続性」および「(3)経営者の自信の程度と実体的利益調整」,「(4)経営者の自信の程度と繰延税金資産の回収可能性判断」に関する研究を査読付き学術誌に投稿する予定である。前者の研究は、査読において有益なコメントを多数頂いため、現在、その点について修正中である。(2)の論文は、学会で頂いたコメントを反映するためにはデータセットを更新する必要があったことから、現在その作業を進めている。サンプルを絞った事前の検証においては、データセットを更新した場合でも検証結果が大きく変わらないことを確認している。(3)(4)の研究は,今年度中に学会報告後,頂いたコメントをもとに修正を行い学術誌に投稿する予定である。 なお,(1)~(3)の研究は、個別会計項目である繰延税金資産に着目するまえに、前提として経営者バイアスと財務報告そのものに与える影響を明確にする必要性があったことから,現在検証しているものであるが、論文として完成次第、それらの研究で得られた知見をもとに(4)の研究に関する仮説を構築し、繰延税金資産の回収可能性判断の領域に落とし込んだ論文を執筆する予定である。
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