研究課題/領域番号 |
20K13653
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
苗 馨允 椙山女学園大学, 現代マネジメント学部, 准教授 (60749414)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | IFRSの任意適用 / 財務報告の質 / 配当 / 会計環境 / 歴史的原価会計 / 公正価値会計 / 退職給付会計 / 制度的要因 / 国際財務報告基準(IFRS) / 財務報告のインセンティブ |
研究開始時の研究の概要 |
補助事業期間中、会計学、経済学、及び管理学に関する文献を網羅的に調査し、会計環境は制度的要因に与える影響、また制度的要因は利害関係者が持つ財務報告のインセンティブに与える影響を明らかにする。 上記の文献調査の結果に基づいて、実証研究に取り組んでいく。仮設を立て、研究モデルを確定し、必要なデータを収集・整理・分析する。 最後、研究結果を国内外の学会での報告、国内外の学術誌への投稿、及び事業報告書の公開を行い、広く社会に発信していく。
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研究実績の概要 |
本研究は特定の国や地域における固有の会計環境に注目し,それらの固有性がどのようにIFRSの適用や企業の財務報告に影響を与えるのかを解明することを主たる目的の1つとしている。 当該年度に,IFRSの任意適用が日本企業の財務報告の質(会計情報の価値関連性で測られる)にどのように影響を与えているのかを解明するための研究の結果をまとめ,学術誌に投稿した。当該研究は,純資産や純利益の総額だけでなく,日本基準とIFRSの個々の会計基準(たとえば,のれんや退職給付に関する会計基準)の差異が,日本基準の会計数値に対して,追加的な価値関連性を有するか否かについても調査する点で,関連する研究を発展させたと思う。 そして,IFRSの任意適用が日本企業の現金配当に如何なる影響を与えるのかを解明する研究を進めてきた。研究結果は,IFRS任意適用企業では,日本基準適用企業に比べて,IFRS任意適用後,配当(配当利回り,(個別ベース)純資産に対する配当金の比率)は微増しただけであるが,その増加は有意であることを示している。 上記の実証研究に加え,退職給付会計を取り上げ,日本基準とIFRSとの基礎にある考え方の相違を解明するための研究も行った。主な研究結果を次のようにまとめる。(1)日本基準とIAS第19号の基礎は歴史的原価会計から公正価値会計へ移ってきたが,前者は歴史的原価会計思考をより重視するのに対して,後者は公正価値会計思考をより重要視するという相違が存在している。第二に,Nissim and Penman[2008](訳書[2012])が提唱した完全な形で公正価値会計を実施するための五原則に照らして,退職給付取引に対して公正価値会計の適切性を考察した結果から,公正価値会計を重視する退職給付会計は株主向けの報告目的を十分に果たすことは保証できないといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況は次のとおりである。 第一に,IFRSの任意適用が日本企業の会計情報の価値関連性に与える影響を解明するための研究は査読付き論文として掲載決定となっている。 第二に,退職給付会計における会計観の変容および公正価値会計の適切性を考察した研究は学会で報告し,加筆修正後の原稿は学術誌へ投稿中である。 第三に,IFRSの任意適用が日本企業の配当に与える影響を明らかにするための研究は予備調査を実施し,研究結果は国際会計研究学会研究グループの最終報告書の一章として載せられ,期間限定で公表された。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は次のとおりである。 第一に,投稿中の研究結果は査読者よりのコメントを反映させる修正を行う予定である。 第二に,IFRSの任意適用が日本企業の配当に与える影響に関する研究は,サンプルの追加やより精緻な分析を行い,国内外の学会で報告する予定である。学会で得られたコメントを反映させる修正を行い,国内外の学術誌へ投稿する予定である。
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