研究課題/領域番号 |
20K13656
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
LI YAN 駒澤大学, 経済学部, 准教授 (80803890)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 金融デジタライゼーション / 金融商品会計 / デリバティブ会計 / オプション価値 / 暗号資産 / 暗号資産デリバティブ / リスクヘッジ / リサイクリング / 利益概念 / 通貨オプション / コンバージェンス / IFRS / 非営利法人 / 金融課税 / 動的リスク管理 / PRA / 実現利益 / 期待利益 |
研究開始時の研究の概要 |
現在の会計基準は、ヘッジ対象とヘッジ手段という一対一の関係を前提としているが、本研究では、このような前提は適切ではないことを、会計理論と金融工学やファイナンス理論の発展著しい経済学の理論を融合させて明らかにする。一対一のヘッジから分散ヘッジへのリスク対応に関する根本的な発想の転換、リスクの静的管理からオプション理論を応用した動的管理への発想の転換により、ヘッジ会計のあり方を根本から再構築する理論を提示する。これに関連して、研究上も実務上も手つかずながら巨額損失問題を抱える非営利組織の金融商品投資について、非営利組織に適した金融商品投資及びヘッジ取引に関する会計基準のあり方を提示する。
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研究実績の概要 |
決算手段として機能する暗号資産のヘッジ性は、暗号資産の持つ通貨としての性質にとどまらず、金商商品あるいは金融派生商品としての性質をも併せ持つ。このことは、様々な利用法が想定される暗号資産を既存の資産区分に当てはめることの困難さをもたらしている。 また、通貨や金融商品は流動性を高める手段としての機能を持つが、これらのデジタル化はそれをより容易にするものとなっているとともに、それ自体が独立した価値変動をすることもある。このことは、デジタル通貨およびデジタル金融商品それ自体が投機の対象となることはもちろんのこと、ヘッジ取引の対象となり、ヘッジ対象にもヘッジ手段にもなりうることを意味する。暗号資産の価値変動リスクをヘッジするためには、理論上、その暗号資産について同量の先物取引を組むことにより可能となる。ここで留意すべきは、先物取引と暗号資産決済との間に直接的な負の相関関係があるのではなく、したがって、ヘッジ対象とヘッジ手段という一対の関係を見出せないということである。 なお、金融商品の資産評価に関連し、デリバティブの中でも特にオプションに焦点を当てて検討を進める。オプションの価値は、原資産の価格との関係に基づいて算定されるのであるが、この理論の実物資産への応用を行う。オプションの価格は原資産の価格に依存するということに止まらず、この関係は実物資産をオプションと捉えることにより、実物資産の評価にも適用可能である。 経済のデジタル化は、リスク込みの将来キャッシュ・フローに基づく資産評価の技法が向上していることによる利用は可能である。評価方法の進展と普及が進む中、将来の予想というリスクテイキングの姿勢を会計情報に反映させることが、純利益等の情報提供に支障を生じさせないのであれば、企業と会計情報利用者との間に横たわる情報の非対称性を軽減する有用な情報となりうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画に基づき、包括利益と純利益との間に横たわるリサイクルを有無という違いをIFRSと日本基準との間で生み出し、純利益の変質をもたら しているため、解決への道筋を得た。 また、ヘッジ会計を取り巻く理論及び基準の混乱は、経済学における事前の期待利益と会計学における事後の実現利益との混在に起因するだけでなく、事前の期待利益は過去のデー タに拠るところが大きいという事実が混乱の原因であることが明らかにした。 さらに、通貨や金融商品は流動性を高める手段としての機能を持つが、これらのデジタル化はそれをより容易にするものとなっているとともに、それ自体が独立した価値変動をすることもある。このことは、デジタル通貨およびデジタル金融商品それ自体が投機の対象となることはもちろんのこと、ヘッジ取引の対象となり、ヘッジ対象にもヘッジ手段にもなりうることを明らかにした。 リスク込みの将来キャッシュ・フローに基づく資産評価の技法により、資産評価を収入額ベースによって統合した結果としての予測利益を別途得ることを可能にするという結果を得た。そのとき、予測利益と純利益の関係は、制度化されている包括利益と純利益との関係とは比較にならない程に複雑化する。 ただし、コロナ禍の影響により、海外との往来が事実上不可能であった。そのため、研究計画に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
暗号資産の技術的基盤であるブロックチェーンはさらなる発展の可能性が模索されており、その一つがDeFiである。DeFiとは、主としてイーサリアムブロックチェーン上に構築された金融アプリケーションのことで、分散型金融と呼ばれるものである。DeFiが暗号資産にもたらす影響を検討し続ける。 オプションの価値は、原資産の価格との関係に基づいて算定されるのであるが、この理論の実物資産への応用の可能性を検討する。例えば、プラントの評価は、取得原価によるものとされ、使用に伴い減価償却による配分が行われることとされている。しかし、資産評価という観点からは、リスクを考慮した収入額ベースの評価を行うことは技術的に可能であり、現実にそのような評価に基づいた経営判断が行われる。なお、このような資産評価方法を制度化する場合、資産を取得すると同時に評価差額が計上されることになり、オプション価格は、必ずしも市場における客観的価値ではなく、経営者の主観が介入する可能性もある。そして、これを利益に含めるかどうかはまた別の議論が必要である。 また、海外の動向については、コロナ感染の状況を見極めつつ、可能な限り、当初予定している海外の金融市場の研究している学者や実務家にヒアリング調査を行う予定である。
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