研究課題/領域番号 |
20K13659
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
井上 謙仁 近畿大学, 経営学部, 講師 (60825511)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 国際財務報告基準 / IFRS / 経営者報酬 / 純利益の押し上げ効果 / のれんの非償却化 / 利益に対する報酬の感度 / 相対的業績評価 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、IFRS適用が日本企業の経営者報酬契約に与える影響について実証的に明らかにすることである。IFRS適用は、のれんの非償却化を原因とする純利益の押し上げ効果を日本企業に与える。このような純利益の変化は、純利益を評価指標として用いる経営者報酬契約に何らかの影響を与えている可能性がある。本研究では、純利益にたいする経営者報酬の感度や、相対業績評価に注目し、それらのIFRS適用前後での変化を実証的に分析することで、IFRS適用による純利益の変化が、経営者報酬の算定にどのような影響を与えているのかについての証拠を得る。
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研究実績の概要 |
本課題は、IFRS適用が経営者報酬契約に与える影響についての証拠を得ることを目的としている。日本企業によるIFRS適用はのれんの非償却化を生じさせる。これが原因となり、IFRS適用は日本企業の純利益を押し上げる可能性がある。この純利益の押し上げ効果のような会計数値の変化が原因となり、経営者報酬の決定における会計利益の有用性が変化しているかもしれない。本研究の目的を達成するために、これまでに①利益に対する報酬の感度、②相対的業績評価、という論点に対するIFRS適用の影響という観点から研究を進めてきた。今年度はこれらの成果について共有するために、学会や研究会での発表、および論文の刊行を行った。また、本課題の遂行に不可欠である関連研究も実施した。 利益に対する報酬の感度については、Ozkan et al.(2012)の追試から、IFRS適用は日本企業の感度を変化させていないことが明らかとなった。さらに、純利益の押し上げ効果は日本企業の利益と報酬の関係にどのような影響も与えていないという証拠も得られている。2000年代以降のコンバージェンスの進展で、日本基準はIFRSとの会計基準の差異が減少している。純利益の押し上げ効果という現象が存在こそするものの、これらの基準の間では会計利益の有用性に差がないことが本研究から示唆されている。 また、相対的業績評価に対する研究から、IFRS適用前では日本企業が相対的業績評価を利用しているという証拠が得られなかった。しかし、IFRS適用後に、日本企業が相対的業績評価を利用していることが確認された。この結果は、IFRS適用で経営者報酬契約が調整されることを原因として、相対的業績評価が日本企業で利用されるようになったことを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、IFRS適用の利益に対する報酬の感度への影響の研究について、2本の論文を公刊することができた。さらに、相対的業績評価についての研究は学会での1報告を行い、リサーチ・デザインを改善する有益な示唆を得た。また、関連研究も進捗しており、本研究の推進に貢献している。これら関連研究については2本の論文公刊と学会での1報告を行っている。研究の進捗や成果報告の状況から、研究はおおむね順調に進展しているといえる。なお、リサーチ・デザインの改善や追加分析などを行い、その後に論文投稿をする必要があると判断したため、研究期間の延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度はこれまでの研究をブラッシュアップするために、リサーチ・デザインの改善や追加分析などを行う。その研究結果については学会や研究会などでの報告や、論文として雑誌などへの投稿で広く公表する。
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