研究課題/領域番号 |
20K13697
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
吉村 真衣 三重大学, 人文学部, 講師 (40837316)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 海女 / 生業 / 地域社会 / 観光 / 海女漁 / 文化遺産 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は伝統的生業の保全と観光活用のメカニズムを、海女漁の事例から実証的に明らかにする。近年海女漁は文化遺産として評価され、各地で保全活用が推進されている。海女漁の保全活用、とりわけ観光活用では、文化遺産の保存、生業としての経済合理性、リージョナルな産業振興、観光客のニーズなど複数の論理が多層的にせめぎあっている。本研究では複数地域の比較研究から、どのような力学のもと伝統的生業の観光活用がなされるのか、地域社会や生業の担い手にどのような影響が生じるのかを分析し、理論的貢献を図るとともに伝統的生業の保全と両立可能な観光のありかたを探る。
|
研究実績の概要 |
2022年度は前年度までの知見と調査計画をふまえ、三重県鳥羽市・志摩市、千葉県御宿町、岩手県久慈市にて調査を実施した。調査では海女の文化的価値の変容が観光につながる事例と観光以外の展開につながる事例の差異に注目し、それぞれに影響する要因や、結果としてもたらされる伝統的生業の「保全」のありかたを明らかにすることに重点を置いた。 海女の観光化の背景には、海女の文化的価値の変容という文脈だけでなく、戦後の地域開発やモータリゼーションなどより広い社会経済的変化の下で漁村地域が観光地としての側面をもつよう再編成されてきたという、地域社会構造の変化という文脈との相互作用があったことがわかった。 調査を通してさらに見えてきたのは、観光が「オカ」における社会経済的変化だけでなく、海女たちの生業の場である「ウミ」における自然環境の変化に対応するための選択肢としても位置づけられていることである。三重県志摩市では、磯焼けなどによる資源減少のため漁獲量が激減した地域が複数ある。それによって海女の人数も減少するなか、生業の場として海と関わりつづけるために、漁場に観光客を呼び潜水を見せる事例が現れた。 これまでの調査における指標に加え、今年度調査から見いだされた自然環境の不安定性への対応という視点に注目して調査を展開することで「伝統的の保全と観光活用」にかかわる枠組みをさらに拡張できると考える。これらの成果の一部は学会発表を通して公表している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は調査計画にもとづき複数地域での調査を実施した。また調査を通して、当初の計画では想定していなかった新たな理論枠組みにつながる視点を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの調査を通して、海女漁という伝統的生業が観光化されるメカニズムが明らかになってきた。また社会経済的要因だけでなく、自然環境という要因の重要性も新たに見いだされた。この要因は、現代における産業や地域社会の持続可能性を考える上で欠かせないものと考える。そのため2022年度に出会った新たな事例を組み込むかたちで調査計画を変更し、調査・分析を継続するとともに、学会発表や論文投稿を通して研究成果を公表していく。
|