研究課題/領域番号 |
20K13706
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
陳 怡禎 日本大学, 国際関係学部, 助教 (30845722)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | サブカルチャー / 台湾 / 香港 / 社会運動 / 趣味共同体 / ファン研究 / 東アジア / ジェンダー / 趣味縁 / 若者研究 / 女性共同体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ファン研究と社会運動研究の両面から東アジアの現代社会の若者、とりわけ女性は、いかに「趣味」を用いて社会空間を構築しているか、さらに社会的関係性を再編成していくかについて考察する。手かがりとして、2014年3月に台湾で起きた「ひまわり運動」、9月に香港で起きた「雨傘運動」といった二つの運動空間に注目し、その空間において女性参加者によって行われる「私的趣味」の実践について検討する。それらの社会運動に参加する女性たちが、戦略的に「私的趣味」を公的領域で実践することによって、趣味縁を中心に結成された女性による「趣味共同体」の可視化をいかに可能にしているのかを分析する。
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研究実績の概要 |
本研究は「社会運動研究」や「ファン研究」の両面から、東アジアの現代社会の若者、中でも特に女性は、いかに趣味を用いて社会空間を構築しているか、さらに社会的関係性を再編成していくかについて考察する。 本年度の研究成果について以下の通りである。(研究成果の一部は、研究活動スタート支援課題番号「19K23275」と共同実施するものである) (1)日本国内学会及びシンポジウム、研究発表会で発表:『アジアの政治運動とサブカルチャー実践問題提起①(ネットワーク社会研究部会ワークショップ)』(日本メディア学会 2022年春季大会)、『台湾の大衆文化から見る若者“本土意識”の構築』(北東アジア学会静岡地域研究会)、『台湾映像作品における女性表象』(2022年北東アジア学会 第28回学術研究大会)、『ポピュラーカルチャー 実践の公共性:ファン実践によるギャップの補填と撹乱』(日本大学国際関係学部 生活科学研究所シンポジウム)、『東アジアの政治運動とサブカルチャー実践』(日本大学Web研究発表会)。 (2)日本国内学術誌への論文投稿:『異郷における社会関係性の再構築―日本在留台湾人女性趣味共同体を事例に』(国際関係学部研究年報,43号 65-76頁)。 (3)学術書籍への寄稿(共著):『台湾社会運動の場における「アイドル」文化現象』(『アイドル・スタディーズ――研究のための視点、問い、方法』194-206頁)。 以上の発表や論文において研究者は、東アジアの女性が趣味縁をめぐって共同体を結成し、さらにその趣味共同体を通して公的社会空間への進出を果たしたことを解明すると共に、女性と既成的社会構造における位置付けの調整や周縁における文化実践についても明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
元々予定していた香港でのフィールドワーク調査は、新型コロナウイルスの影響によって実施できなかったが、新聞記事、ネットアーカイブなどを活用し、二次データに対する分析を行った。その一方で、台湾に関する研究は、フィールドワークやインタビュー調査(一回)を実施できた上、台湾現地で二次資料を収集し、そのデータ分析を行うこともできた。また、研究範囲を拡大し、「社会運動を経験する女性」の生活史も併せて聞き取り調査を実施し、彼女らの日常と社会運動での振る舞いや日常的実践を調べることができた。そのため、本研究課題の進捗状況はやや遅れていると考えられる。 また、本年度の主要な発表業績は、フィールドワークや対面式インタビュー調査に基づくものではないが、2次資料の収集や分析に重きを置くようにしたため、デジタルアーカイブなどの二次資料を利用し、新聞記事、運動現場記録映像や写真などのデータを集めることができた。このように香港や台湾での既存研究文献を収集することができ、令和4年度は、前述したデータの分析作業を行うことができた。しかしその一方、女性趣味共同体や日常生活的文化実践に分析の重点を置いていた一方で、社会運動論に関連する理論の研究について、東アジア以外の社会運動理論蓄積を系統的に整理する必要があると考えられ、最終年度の課題とする。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度(2023年)に向けて、今後の研究の推進方策を以下のように予定している。 (1)研究の集大成となる論文投稿発表に重きを置く。また、オンライン研究会を開催し、日本国内や台湾、香港の研究者を招き、「社会運動とサブカルチャー実践」を主題に、議論の時間軸と空間軸の拡大を目指す。 (2)趣味共同体やファン研究を引き続き行い、台湾や香港の女性趣味共同体の活動や共同体内部の関係性変化に注目することを通して、私的趣味と公的社会空間との関係性について考察し続け、台湾や香港の社会背景や歴史的視点を取り入れ、台湾や香港社会構造の中の女性の位置付けを明らかにする。
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