研究課題/領域番号 |
20K13714
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
大原 ゆい 大谷大学, 社会学部, 准教授 (50725174)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ソーシャルサポート / 省察的実践 / <よりそう支援> / ソーシャルワーク / 福祉実践家養成 |
研究開始時の研究の概要 |
ドナルド・ショーンの提起する省察的実践者という専門家像を手がかりに、制度の狭間にあり、従来の社会福祉制度や支援の枠組みだけでは問題の所在や、解決のための道筋を見つけにくい「今日的な福祉問題」に取り組む<よりそう支援>という実践の構造分析を行い、実践家らの支援の特徴および、これからのソーシャルサポートの担い手のあり方を明らかにする。 なお、本研究のキーワードである<よりそう支援>とは、「今日的な福祉問題」に対して、当事者とともに状況を分析し、一緒に考え、行動し、必要に応じて社会資源を作り出し、社会変革をも視野に入れた実践家による実践のことである。
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研究実績の概要 |
今年度は、<よりそう支援>に取り組む実践者として、保護司と発達障害児およびその家族への支援に携わるワーカーを取り上げ、活動を始めた経緯やエピソードを聞き取るインタビュー調査を実施した。 まず、保護司についてであるが、更生保護における保護司制度は他国に例を見ない日本独自の制度であり、その制度運用については諸外国からも注目されている。保護司制度の特徴はその運用がボランタリーな力によって支えられている点にある。また、実際に対象者をサポートする際には専門職である保護観察官との協働が欠かせない点も注目すべき点である。本研究課題は新たなソーシャルサポートのあり方を探求するものであるが、専門職と非専門職の協働は<よりそう支援>を構成する重要な要素のひとつであることがインタビュー調査をかさねるなかで明らかとなった。 次に、発達障害児への支援については教育機関との連携が不可避であるが、インタビュー調査を通して教育機関に福祉的支援が入ることの難しさがあることがわかった。近年、教育現場ではインクルーシブ教育が注目されているが、特別支援学級担任は教員免許のみで可能となるため必ずしも専門的な教育を受けているわけでなかったり、労働環境の余裕のなさから教員らに余裕がなかったり、福祉的支援を「介入」とみなし「観察」を拒否する傾向にある。実践者としては、先生たちを決して非難することなく、子どもらの発達・育ちを支える立場として一緒に考えるスタイルを重視している様子が明らかとなった。 これらのインタビュー調査から、<よりそう支援>に取り組んでいくためには専門職と非専門職の連携・協働が重要となるが、効果的にこの関係を構築していくには既成概念や制度の壁といった難しさがあり、それが実践者らの「ジレンマ」につながっているという新たな知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フィールド調査および研究会での報告・ディスカッション等によって<よりそう支援>に取り組む実践者の状況を明らかにするための手がかりを得ることができた。 とくに従来の福祉従事者の実践スタイルに捉われない<よりそう支援>の実践者はさまざまな領域で多様なスタイルで取り組まれていることがわかった。 一方で、新しい実践スタイルを確立することは容易ではなく、そこには従来の支援の方法や社会規範などとの間で実践者らは常にジレンマを抱えているという知見を得られたことは、本研究をさらに深化させる上での大きな収穫であった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた知見をもとに、さらに<よりそう支援>に取り組む実践者のインタビュー調査とその実践現場の視察を継続して行っていく。2024年度は研究最終年度となるため、これまでのインタビュー調査の結果をもとに<よりそう支援>に取り組む実践者のスタイルをモデル化するための要素を抽出し、研究結果をまとめていく。
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