研究課題/領域番号 |
20K13766
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
高橋 康史 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 講師 (60824711)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 脱構築 / 社会的相互作用 / 家族規範 / 福祉国家 / インターセクショナリティ / ヘテロノーマティビティ / 子ども時代の逆境的体験 / 脱家族 / アイデンティティ / 青少年福祉 / アイデンティフィケーション |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、保護者が居ない子どもや保護者に監護させることが適当でない子どもを、公的責任によって、社会的に養育・保護する仕組みである「社会的養護」の外側にいる子どものケアのあり方を、子ども時代に逆境的体験(虐待・家族の機能不全)をした者自身が用いるサバイバル・ストラテジー(逆境的体験それ自体とそこから派生する生活問題に対する生存戦略)という観点から検討する。
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研究実績の概要 |
本研究では、「子ども時代に逆境体験をした者はどのように生活を維持していくのか」という問いに答えるべく、当事者へのインタビュー調査、日本でのGood Practiceの収集、諸外国の事例収集という3つの研究を組み込んでいる。 本年度は、①当事者へのインタビュー調査とその分析、②他領域からの研究に対するスーパービジョンを行った。第1に、昨年度に引き続き、子ども時代に逆境的体験をした者に対する生活史調査による縦断的質的研究に着手した。子どもの視点からみた逆境的体験とそのサバイバル・ストラテジーに関するin-depthなインタビューを5名を対象として行った。第2に、法哲学・社会学等からの観点から、研究に対するスーパービジョンを実施し、学際的な視点からの検討を試みた。なお、国際比較研究においては韓国の実務家や専門家との研究実施に向けた打合せを行った。 また、子どもの視点からみた逆境的体験とそのサバイバル・ストラテジーに関するin-depthなデータを収集することを目指し、子ども時代に逆境的体験をしながらも社会的養護による支援(社会的支援)を得ず、生活を維持した者を対象に半構造化面接形式による縦断的生活史調査の実施を行った論文を掲載した書籍の出版を行った。 今年度までの研究により、次の3つの概念が重要な意味を持つことが明らかになった。第1に、家族規範における多元性である。具体的には、異性愛規範・家父長制・男性性規範・女性性規範などがあげられ、そこには「家族が普通である」ということを社会的に構築していく権力作用があることが明らかになった。この課題を乗り越える上で、昨年度明らかにしてきた、第2に、複数の当事者性とそれらの関係性を捉えるインターセクショナリティ(交差性)概念の重要性に加えて、第3に、自己と社会(家族)規範の状況定義における自由性の確保も明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度と同様に、コロナウイルス感染拡大とそれに対する社会的対応の影響により、インタビュー調査それ自体に影響が出ている。本研究テーマは、センシティヴな内容を含むために、ZOOM等のビデオ通話での調査も実施が難しい状況に置かれた。以上の理由により、研究に大幅な遅れがみられている。 そうした状況の中、一事例ではあるが、インタビュー調査にもとづいた本研究の成果を査読論文として発表したものを掲載した、書籍の出版を達成した。アウトプットは、数は限られるものの、着実に行っていった。 ただし、昨年度と同様に、研究Ⅲに対しては大きな支障が出ている。諸外国における制度政策の分析による制度比較研究を行う予定であった。家族規範や社会的養護の仕組みが異なる取り組みから日本への示唆を得ることにより、日本における限界と課題を明らかにする。多様な「家族観」のもと司法、福祉、教育等の多様なアクターが参加しながら社会的養護が進められているニューサウスウェールズ州(オーストラリア)を事例として選定していたが、渡航が困難な状況となり、今後の研究実施にも大きな影響が出ると見込まれる。このような状況に対して、2021年度からその代替案として韓国を事例にオンラインビデオシステム、資料収集等を用いて比較検討を行う準備をしてきた。
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今後の研究の推進方策 |
今後においても、引き続き子ども時代に逆境的体験をしながらも、社会的養護による支援を得ず、生活を維持した者に対するインタビュー調査を行いながら、それを理論的視点から分析することを継続する(研究Ⅰ)。次に、社会福祉学的な考察を行う為に、日本においてGood Practiceを収集しながら(研究Ⅱ)、諸外国から示唆を得る(研究Ⅲ)。 特に、2022年度は、研究Ⅲを韓国を対象として行う。これによって、社会的養護を補完するためのオルタナティヴなケアモデルを提案することを目指す。 研究Ⅰでは、子ども時代に逆境的体験をした者に対する生活史調査による縦断的質的研究をさらに実施しつつ、データを分析していく。具体的には、子どもの視点からみた逆境的体験とそのサバイバル・ストラテジーに関するin-depthなデータを収集することを目指し、子ども時代に逆境的体験をしながらも社会的養護による支援(社会的支援)を得ず、生活を維持した者を対象に半構造化面接形式による縦断的生活史調査の実施を行う。コロナウイルス感染拡大防止に努めつつ、可能な範囲で実施していく。研究の過程で析出された、交差性および自己の自由性の観点から、さらに分析を深めていく。 研究Ⅱでは、国内におけるGood Practiceの収集については、昨年度までの内容をまとめを行い、支援モデルの構築のために活かしていく。 研究Ⅲでは、韓国ソウル特別市における制度政策の分析による制度比較研究を行う。家族規範や社会的養護の仕組みが異なる取り組みから日本への示唆を得ることにより、日本における限界と課題を明らかにする。今後においても、研究の対象をオンライン調査が実施可能な、韓国へと変更し、韓国における家族規範・異性愛規範の影響と比較しながら、分析を進めていく。
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