研究課題/領域番号 |
20K13820
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
甘 靖超 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (20789044)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 民俗誌 / 家訓集 / 供物 / 祖先祭祀 / 地方神 / 長江流域 / 黄河流域 / 祭祀 / 食文化 / 神饌 / 祭祀儀礼 / 年中行事 / 長江・黄河流域 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は地域文化の伝統と精神性を端的に表す祭祀と供物に対する実証的研究を通じて、中国長江・黄河流域の食文化の異質性と共通性を再考する。地域・生業・祭祀対象ごとに異なる食の多様性と、それらの違いをこえた食の構造的特徴を明らかにすることが目的である。本研究による長江・黄河流域の食文化の異質性・共通性の解明は、中国のみならず日本さらに東アジアの食文化を相対化することに役立つ基礎資料となる。また供物と祭祀に伴う食事行動の構造的特徴の抽出は、宗教や祭祀組織の視座による従来の祭祀研究の成果を補完し、祖先・神仏信仰や人間関係のあり方に対する理解を深めることが期待できる。
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研究実績の概要 |
2022年度は2020-2021年度に続き、コロナ禍にあって、中国への渡航および当初予定していた長江、黄河流域における実地調査を断念せざるを得なかった。 そこで本年度は、1)供物と行事食に関する民俗誌の記述方法についての基礎的研究に注力した。従来、中国における民俗誌的研究が歴史文献に偏重し、民俗事象のコンテクスト(いつ、どこで、何が行った、なぜ行ったか)に関する記述が不明確であると指摘されているが、2010年以来、年中行事と行事食に関する研究は、調査対象地でのフィールドワークに基づく民俗誌の記述が増えていることがわかった。中国における民俗誌研究の動向を追い、第10回中国語文献を読む会にて「中国における年中行事と行事食の民俗誌的研究の視点」を題した発表を行ったことは、今年度の成果である。 2)長江流域の祭祀に重要視されるモチ米食品と黄河流域の祭祀によく用いられるコムギ食品の名称の由来に関する史料を収集し、江蘇省と山東省における清代から民国時代までの地方誌から祭祀関連の記録を抽出し、両地域の祖先祭祀に使用される供物の品目や用途等をデータ化した。今後、長江と黄河流域の祭祀と供物の地域間の比較を論文化していく。 3)中国江南の祖先祭祀と供物に関しては、オンラインの聞き取り調査および調査対象である親族集団の家訓集等の史料の解読を通して、無錫市鵞湖華氏の春祭と秋祭がおおむね明代から受け継がれている家訓集『慮得集』に記している通りの供物を用い、年中行事の節目や季節の変わり目に行事食や旬の物を供えることや、牲が格上の供物とされ、猪口と箸の数により祭る先祖を示すことが明代に遡れると明確にした。種々の供物の文化的意味および祭礼の儀の変遷や親族集団「宗親会」が祖先祭祀の伝統の継承に担う役割について考察を行い、次年度に日本生活学会で発表し、学会誌に投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題は、黄河、長江流域の祭祀と供物の実態究明が核をなすものである。しかし2020年度からスタートした初年度に続き、2021年度、そして本年度も新型コロナウイルス感染拡大の状況下で、中国への渡航および当初予定していた中国各地における実地調査を断念せざるを得なかった。一方、中国現地では感染予防のため、本研究の調査対象である親族集団による大規模な祖先祭祀や地域の地方神の祭祀が中止された。本研究課題の予備的調査から協力を得ている現地の協力者の多くが高齢者であり、オンラインでの聞き取り調査への対応が困難である事情を鑑み、文献調査を中心に研究を進めてきた。こうした当初の計画段階では想定できなかった事態によって、研究の進捗に大きな支障をきたした。そのため、本年度の研究調査が当初の計画より遅れることになった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は新型コロナウイルス感染症の収束に伴い、中国現地での実地調査が可能になると予想される。中国現地でのフィールドワークは、夏季と冬季にわけて黄河流域の陝西省、山東省、長江流域の浙江省、江蘇省を中心とした地域で実地調査を行う予定である。祭祀の開催時に現地への渡航と参与観察ができない場合は、関係祭祀の執行代表者および祭祀の参加者への聞き取り調査を行い、コロナ禍の前後における祭祀と供物の変化の有無も調査し、報告書を作成する。また聞き取り調査を行う際に、これまで調査対象地域で行われた祭祀に関する写真や文字資料を入念に収集していく。文献調査については引き続き、地方誌等の史料から黄河、長江流域の祖先祭祀と地方神の祭祀に関する供物の資料を収集し、データ化したうえ、考察を行う。そして2020-2022年度の研究内容の論文化と学会発表をする予定である。
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